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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第86話 紅い月
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 答えは単純明快。俺は俺が正しいと思った道を進むだけ。それに、少なくとも彼女との約束を果たさなければ成りませんし、その時まで彼女が俺の元を離れる事はないでしょう。

 彼女がおぼろげながらも前世の記憶を有して居る理由が、前世の俺に有るのならば。

 振り返り、彼女を見つめたまま黙って仕舞った俺に対して二歩近付き、普段通りの位置に並ぶタバサ。
 未だ科学の結晶。電気による照明の灯される事のない石造りの廊下は……、冷たく昏い。
 しかし、その昏い世界の中で、唯一、明るい光を発して居る存在。それが今の彼女。

「大丈夫。わたしと貴方なら問題はない」

 俺の左肩の少し下から彼女の声が聞こえる。
 俺が後方を見つめて居る今、彼女は進むべき先にその視線を向けながら。

「こんな寒いトコロで立ち話は無粋やな」

 やや苦笑交じりにそう答え、俺も彼女と同じ方向に向き直り、彼女と同じ方向。少し昏い廊下の先を見つめる。
 まるで見えない答えを求めるかのように。
 しかし、其処には……。

 少なくとも、ふたりの未来が見えて居なかった事だけは確かでした。


☆★☆★☆


 真円に近い蒼い月のみが支配する世界。
 星々は瞬き、蒼き偽りの女神は普段よりも冷たい光輝を地上へと投げ掛ける。

 十二月、第四週、オセルの曜日。

 風の精霊を友とする事により、俺とタバサを乗せる翼ある竜(ワイバーン)は通常の飛竜と比べるとより高く、そしてより速く飛ぶ事が可能。
 現在、高度四千メートル辺りを西南の方向に向け飛行中。

「寒くはないか?」

 北極生まれ、シベリア育ちの猛烈な寒気団が張り出して来たからなのか、現在の周囲の気温は氷点下三十度以下。少しでも肌を露出すれば、其処から凍傷を起こしても何ら不思議ではない外気温。更に、大気が薄いが故に常に呼吸が苦しく、僅かな吐き気と強い頭痛が起きても不思議では無い高度。
 そんな中で、現在の彼女……。紅いフレームの伊達メガネ。トリステイン魔法学院の制服。白のブラウスに黒いミニのプリーツスカート。白のレギンスに革製のローファ。魔術師の証の闇色のマントと自らの身長よりも大きな魔法使いの杖。一切の防寒対策が為されていない普段通り……リュティスの宮殿に居る時とは違う、ガリアの騎士として活動する際の彼女の出で立ち。

 地球世界のオーロラ観賞ツアーなら、間違いなく同行を拒否されるで有ろう服装の相手に寒くはないか、の問い掛けは常軌を逸して居るとしか言い様がない状態。

 しかし……。

 女の子が行う足を崩した座り方。所謂、横座りと言う座り方をして、その膝の上に星と月明かりの下で有るにも関わらず、和漢に因り綴られた書籍に瞳を上下させていた彼女が、僅かに視線を上げて俺を見つめ
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