第5章 契約
第86話 紅い月
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みと言うのは、良人のオーディンがフェンリルに呑み込まれて死ぬ事だと言われています。
いや、何もかもが伝承通りに進む訳はないか。
そう考え、軽く目礼のみを返し立ち上がる俺。
俺の運命は益々、追い込まれた可能性が高く成って来ましたが、そんな事は最初から……。身体の各所に聖痕が付けられ、瞳の色が変わった時から判って居る事。
今更悔やんでも仕方がない事。
まして、それを運命として簡単に受け入れなければ……。神とやらが押し付けて来た運命と言うヤツに抗い続ければ、最終的には神の方が自らの過ちに気付く事と成るのです。
外堀、内堀まで埋められたとしても、未だ俺自身と言う城が落ちた訳では有りませんから。
「トコロでオスマン老……」
お茶の飲み終わった食器をタバサと二人で手早く片付けながら、本日、ここにやって来た最後の問い掛けを口にしたのでした。
☆★☆★☆
「取り敢えず、おめでとう、と言うべきなのかな」
オスマン老の部屋を辞する直前に問うた内容で、タバサが二年次も魔法実技に於いては首席で有った事が確認出来たので、その事に対する祝いの言葉を口にする俺。
その俺の口元を、リュティス。……地球世界のパリの十二月に相応しい大気が白くけぶらせた。
俺の言葉に、それまで俺の右側をゆっくりとしたペースで歩いていた彼女が足を止める。
そして、振り返った俺の瞳を覗き込み、僅かに首を横に振った。
「本当に首席に成るべきはジョルジュ・ド・モーリエンヌで有り、もう一人居るとすれば、それはモンモランシー」
確かに、今現在のトリステイン魔法学院二年の首席は誰かと問われると、俺ならばタバサだと答えるでしょうが、この四月の段階では違った可能性が大ですか。
俺が出会った時のタバサの魔法は精霊を友に出来ない魔法。
しかし、その当時からジョルジュやモンモランシーは精霊を友とする、この世界的には異端や悪魔の技と言われる魔法を使用して居たのですから。
ただ……。
ただ、タバサの答えは増長して居る訳でもなければ、自らを卑下して居る訳でもない。出会った頃から変わらない、自らを客観視出来る能力。冷静に自分の状況を理解している証ですから、悪い答えではないと思います。
それに……。
「あの質問の意味を知りたい。そう言う事なんやろう?」
そう問い掛ける俺。そもそも、トリステイン魔法学院でのタバサの成績を聞きたかった訳では有りませんから。オスマン老に最後に問い掛けた内容は。
しかし……。
しかし、僅かな空白の後、静かに首を横に二度振るタバサ。
但し、これは拒絶……と言う雰囲気では無さそうな感じ。だとすると、
「あのオスマン老への最後の質問。トリステイン魔法学院の生徒
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