第5章 契約
第86話 紅い月
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意味は、取り込める者は何でも取り込む。勧誘と借金の申し込みは早いほど良い、と言う意味なのですが。
流石に、系統魔法以外の魔法。おそらく精霊を友とする事が出来る人物を遊ばせて置ける程、今の俺に余裕は有りません。
次の戦争。聖戦には、ガリアの軍隊は系統魔法の使用を禁止する必要が有りますから。
やや強い視線で俺の顔を見つめるオスマン老。この視線は多分、俺の真意を探る意味。
しかし、それも一瞬の事。直ぐに軽く首肯いた後、普段の飄々とした雰囲気を取り戻す。
そして、
「そうさのう……」
少し考える仕草のオスマン老。ただ、これはどうにも取って付けたような雰囲気。おそらく、彼の中には、既に答えが有るはず。
短い逡巡。その後、軽く手を叩き、
「そうじゃ。こう言う時は古い友人に聞くのが一番じゃて」
……と独り言を呟き、自らの懐に手を入れるオスマン老。
しかし、古い友人?
友人に話を聞くのと、自らの懐に手を入れると言う行為に、イマイチ繋がりが理解出来ずに、そのまま推移を見つめ続ける俺。確かに、地球世界ならば携帯電話を取り出して来るタイミングでしょうけど、ここハルケギニアにはそんな物は存在して居ませんし、更に、魔法を使用しての遠話は、俺の施した結界が邪魔をして難しいと思うのですが。
内心、次にオスマン老が何を行うのか興味津々に見つめる俺。その目の前に彼が懐から取り出したのは……。
「ネズミ?」
懐から取り出したのは一匹のネズミ。身体の大きさは十センチ程度。そしてそれと同じ程度の尻尾が有ると言うトコロから、家ネズミ。おそらくハツカネズミと言うヤツだと思います。色は文字通りネズミ色。古い友人と言う事は、このネズミはオスマン老の使い魔と言う事に成るのでしょうか。
「モートソグニル。お主ならどうするかの?」
俺の驚きになど関心を示す事もなく、自らの右手の上で軽く小首を傾げているネズミに対して、そう問い掛けるオスマン老。
しかし、モートソグニルか……。
そのネズミの名前からも不吉な影を見付け出す俺。そんな俺の気分など意に介する事のないオスマン老は、何やらネズミを相手に相談中。
おそらく、使い魔との契約により、ある程度の意志の疎通が可能と成って居るのでしょうが……。
自らの手の平の上に乗るネズミを相手に会話を続けるローブ姿の老人と言う、非常にシュールな光景を瞳に宿しながら、そう考える俺。一般人の感覚から言うと、お爺ちゃん、終に来ちゃったよ、と言う感想を得られる光景。
もっとも、オスマン老の使い魔ですから、彼の手の上に居るのが普通のネズミと言う訳ではないでしょうが。
その時。
「何々。太陽は暗くなり、大地は海に沈むとな?」
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