第5章 契約
第86話 紅い月
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スマン老はトリステイン魔法学院の学院長に呼び戻されるべき人物ですし、本人もそれを望んでいると思います。
しかし、
「どうです、ここの生活は?」
カップにコーヒーを注ぎながらそう問い掛ける俺。もっとも、俺自身はコーヒーの味がイマイチ判らないので、味に関しては微妙な線だと思うのですが。
そもそも、ここに持って来る間にもコーヒーと言う飲み物は酸化をして行く代物。直ぐに風味が落ちて行くので、本来ならば、オスマン老の部屋で淹れた方が良いのですが。
ただ、味に関してアレコレと言われる事はないとは思いますけどね。
「魔法を使用せずに室温や照明の管理が出来る。水をふんだんに使用する事が出来る。食事も上々。これでもう少し美人が居ったら、ここは正に桃源郷と言う所かな」
穏やかな微笑みと共にそう答えた後、琥珀色……と称される液体に八割方満たされたカップを口に運ぶオスマン老。
あまりコーヒーを飲まない俺でも、香りだけは楽しむ事の出来る独特のほろ苦い香りが、適度な温度に調整された室内に親密な空間を演出している状態。
そう。ここヴェルサルティル宮殿は暮らしの電化を図って居る、このハルケギニアの常識の向こう側に存在する宮殿へと変貌しつつ有ります。
元々、ここは深い森だった場所を切り開いたが故に、水。それも綺麗な水に関してはかなり不足していた地域だったのですが、それを少し離れた位置に流れるシテ河から水路を作り、宮殿に隣接する巨大な貯水槽にため込む。
当然、現在ではその水路に、小規模の発電施設を幾つも併設。
それに合わせて巨大な敷地を利用した太陽光発電。
更に、この規模……。真偽の程は不明ですが、ヴェルサルティル宮殿が発生させるゴミの処分を司って居た使用人が、余りの悪臭に耐えかねて何人も死亡したと言われている悪名高きゴミを可燃性のガスと化し、そのガスを利用して発電を行い、同時に温水を作り出すシステムも導入。
この事に因り、暖房の為に消費して居た膨大な燃料を節約し、それぞれの部屋で火を照明や暖房に直接使用しない事に因り火災のリスクを下げる。
このヴェルサルティル宮殿は、地球世界のヴェルサイユ宮殿で問題とされていた部分。室内が暗く、冷たく、そしてトイレが少ないなどの問題点がかなり改善されているはずですから。
実際、毎日の入浴と、この世界的には初めて導入されているんじゃないかと言う近代的……俺が思う地球世界では一般的な水洗トイレ。このふたつだけでも住環境としては、ハルケギニア世界的には最高レベルだと思うのですが。
ただ、住環境だけがその場所で暮らす為の指標では有りませんか。
それならば……。
「――フェンリル。西の蒼穹に新しい彗星が確認されたそうです」
行き成り、核心に近い部分
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