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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第56話 「くたばれ、皇太子!! (ラップ心の叫び)」
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ヒが大声を出すと、ラインハルトとジークがひょっこり顔を出してきた。
 二人とも呆気に取られておるようじゃ。

「これが銀河帝国皇帝の言葉だ。なんともはや情けない。いいか良く聞け、これから先、エルフィンなり、マクシミリアンなりがこのような不甲斐ない言葉をほざいた時は、遠慮はいらん。思いっきり蹴っ飛ばしてやれ。俺が許す」

 うぬぬ。ラインハルトが深く頷いておるわ。
 あいもかわらずかわいらしい格好をしてるというのに、ルードヴィヒの悪影響をまともに受けておるのか……不憫な子じゃ。
 それに引き替えジーク、ジークはどうじゃ。そなたは余の味方をしてくれるな。そうであろう?

「働いてください」

 ばっさり切り捨ててきたわ。ひどい、余はそなたらを息子のように思っていたのじゃぞ。
 それなのになんという無慈悲な言葉じゃ。

「味方はおりませぬな」

 リヒテンラーデがそう言うと、女官達も深く頷きよった。
 どいつもこいつも余に対する敬意というものはないのかー。

「ないっ!!」

 ルードヴィヒが断ずる。
 そなたには聞いておらぬ。うぬぬ、どうしてくれようか。

「薔薇園、燃やされたいか? うん?」
「そなたは……そこまで鬼になれるというのか……悪魔に魂を売り渡したというのかー」
「けっ、なにをぬかすか。せからしか、嫌ならはたらけー」
「いーやーじゃー」

 駄々を捏ねていたら、ルードヴィヒが露骨に軽蔑を露にした視線で射抜いてきた。
 そしてさりげなく指を鳴らし、あごをしゃくって言い放った。

「皇帝陛下はご乱心なされた。医務室へお連れして、拷問なり洗脳なりして、性根を叩きなおして差し上げろ」
「ひいぃ〜、まさか余の熟れた身体を貪ろうと……」
「気持ち悪い事をぬかすな!」

 実の息子に足蹴にされる皇帝というのは、余ぐらいなものじゃろうな……。
 大帝ルドルフならば、どうなされたであろうか?

「たぶん大帝ならば、そもそもこのような言い争いなどなされなかったでしょうな」
「働くぐらいなら、喰わぬなんて言わなかっただろう」

 リヒテンラーデとルードヴィヒがしみじみと話していた。
 どうせどうせ、余はふんっ。

「ところで今日は何用で来たのだ」
「ラインハルトがハイネセンに向かうからな、ジークがラインハルトの代理を務めることになった。その顔つなぎだ」

 なるほどのう。ラインハルトは外に向かい、ジークは内に向かう。
 案外、適材適所というべきか。
 ラインハルトはブラウンシュヴァイクの下で外交を学び、ジークはリッテンハイムの下で内政を学ぶ。ふむ。ルードヴィヒめ、今からこの二人に英才教育を施すつもりじゃな。
 まったくよく先を考えるものじゃ。
 次の芽を、その次の芽を、
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