第56話 「くたばれ、皇太子!! (ラップ心の叫び)」
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
第56話 「中に誰もいませんよ」
アレックス・キャゼルヌだ。
フェザーンを通じて、あの皇太子からサイオキシン麻薬に関する協議を行いたいとの申し出があった。プラス地球教に対しても同様に協議を行いたいらしい。
それ自体はこちらとしても異存はない。
サイオキシン麻薬は同盟にとっても、重大な懸念事項だからだ。
そして協議の全権大使として、門閥貴族の雄。ブラウンシュヴァイク公爵が派遣されるという。これは皇太子が本気で協議するつもりがあるという、明確なメッセージだともっぱらの噂だ。
ただあの皇太子が麻薬の協議だけを目的としているとは思えないのだが……。
まあ考えすぎても仕方がないかもしれない。
■統合作戦本部 ジャン・ロベール・ラップ■
ここ最近、ロボス派のアンドリュー・フォーク大佐とよく話し合っている。
俺はまあ、シトレ校長派になるのだろうが、いつのまに派閥に入っていたのかと、疑問に思うこと多々だ。話してみるとフォーク大佐も決して悪い人物ではない。いささか独善的な部分があるが、それは人間誰しも同じだろう。多かれ少なかれ独善的な部分はあるものだ。
フォーク大佐はヤンやアッテンボローとも話しているが、ヤンはどうやらフォーク大佐に対して、壁のようなものを感じているらしい。まあ、あいつは引っ込み思案な部分があるからな。あまり強く自分を主張するタイプじゃないし。
それにしてもアッテンボローときたら、フォーク大佐に向かっていつものテンポで食って掛かっては、理路整然と言い返され、悔しそうにしている。なにをしてるんだか……。
「ラップ先輩、あいつ妙にむかつきませんか?」
アッテンボローが憤懣やるせないといった表情を浮かべ、言い放った。
向こうだって同じように思っているだろうよ。そう思いつつ肩をすくめてみせる。
まったくアッテンボロー、お前さんが突っかかりさえしなければ、向こうは気にしないだろうに。
「それにキャゼルヌ先輩があの野郎を庇うし」
「はは〜ん、お前さん、焼きもちを焼いてるんだろう」
俺がそう言うとアッテンボローの奴は、そんな事ありませんと大仰に騒いでみせた。
「とはいえフォーク大佐は後方担当としては優秀だからな。キャゼルヌ先輩としても教え甲斐があるんだろう。俺やヤンやお前さんと違ってな」
「まあ、そりゃ分かりますがね」
「ところで、ヤンはどうしてるんだ?」
「ここのところ、あの皇太子殿下に夢中ですよ。皇太子に関する本を読み漁っています」
あと立憲君主制に関する本も読んでいますと言ってくる。
なるほどな〜。ここのところ皇太子に関する本が数多く同盟で出版されている。かくいう俺も何冊か読んでみたが、おおよそ否定したくても否定しきれない相手という印象が強
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ