高校一年
本格的始動、そしてつまずき
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にも及ばない。
格が違う。
(でもまだ、初回だ。モノはやりようだ。)
宮園は前を向いた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ボールフォア!」
(くそー、もう球威だけでは押せなくなってきたな。これはマズいぞ…)
回は6回まで進んでいた。スコアは1-3で帝王大水面のリード。鷹合はあれから安打は6本許し、四死球も5つ出して毎回ランナーを背負いながらも3失点で踏ん張っていた。
しかしこの回は安打、安打、四球で無死満塁と大ピンチを迎えてしまった。
鷹合の球に帝王大打線が慣れてきた感がある。そもそも変化球もスライダーくらいのもので、投球に引き出しがなく、帝王大レベルの打線相手に力で押し切るのは限度があった。
「タイムお願いします」
宮園はこのピンチにタイムをとる。
審判によってプレーが止められ、マウンドに三龍の内野陣が集まった。
そしてベンチから伝令が駆けてくる。
「ここはお前しかいない!お前が三龍のエースだ!って、監督は言っとーよ」
伝令に出てきた先輩が、選手の輪に入るやいなや鷹合に言った言葉に、宮園は目を見開いた。冗談じゃないのか?もうどう見たって限界だ、後は打たれるか押し出ししかない。帝王大打線のタイミングは合っている。それを外す技術なんて鷹合にはない。宮園はベンチに目をやった。監督の乙黒は最前列に仁王立ちで腕を組み、メガネ面に納得の表情を作り、こちらを信頼しきった顔をしている。その顔が、宮園にはひどく投げやりなモノに見えた。ブルペンに目をやると、美濃部が狂ったように一生懸命投球練習を行っていた。キレのあるスライダーがブルペン捕手のミットに決まっている。これが使えたらなぁ、と思った。
(あぁ、分かった…モノはやりよう…このチームは、その“やりよう”こそが分かってないから、だから勝てないんだ…)
途端に、宮園の心の熱がすーっと冷めていった。
目から光が失われた。
プレーが再開されると、帝王大打線は容赦無く鷹合に襲いかかった。高垣が、花岡が、次々と外野フェンス際まで打球をかっ飛ばす。走者が次々とホームインしていく。鷹合がストライクを放れなくなる。泣きっ面に蜂、野手にもエラーが出始める。総崩れ。清々しいほどの大崩壊だ。
サヨナラコールドのランナーがホームベースを踏むのを見届けた宮園は、無表情で捕手のポジションに突っ立っていた。
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