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しがた左に曲がって路地へと入っていった人に、見覚えがあったのだ。
否、見覚えがあるというか、知り合いである。
(ティア?どーしたんだろ)
冷えて来ているこの時期に薄いトレンチコートを羽織っただけのティアは路地へと入り、影の中に姿を隠していく。
(ま、ティアも考え事あるんだね)
勝手に1人で納得し、ルーはギルドへと足を進めた。
ルーは気づいていなかった。
―――――ティアの表情が、恐怖に染まっている事に。
そして、自分の事ながら、本人も気づいていなかった。
大好きで大好きで仕方ないルーシィと会っていない事を、ルーが忘れている。
ルーシィの事を忘れるほどの“何か”が、ルーの中で膨れ上がっている事に。
「・・・なぁ、ミラ」
「ん?どうしたの?」
バーカウンターに座ってカラコロとグラスの中の氷を揺らすアルカに声を掛けられたミラは、皿を拭く手はそのままに首を傾げた。
酒の入ったグラスを持ち、氷を鳴らす様にグラスを揺らすその姿は服装と相まってどこぞのホストに見えなくもないが、その漆黒の瞳に宿る深い愁いが全てを砕いて台無しにしている。
ミラは首を傾げながら、心配そうに瞳を揺らした。
ここ数日、アルカはずっとこうだ。
勿論面白い物を見つけたら笑うし、全力で追いかける。
が、何もない時はバーカウンターに座り、目に愁いを宿してボーっとしているのだ。
「・・・悪ィ、何でもねぇ」
「そう。何かあったら呼んでね」
「ん」
素直に頷き、カラコロと氷を鳴らす。
こんなアルカを見るのは初めてだ。
付き合い始めて4年経つが、こんなに愁いを帯びたアルカは見た事がない。
今日は何かあったかと思い出すが、特に何も無いはず。
「ミラちゃーん、ビールお願い!」
「はいはーい」
ジョッキにビールを注ぎ、ちらりとアルカに目を向ける。
溜息をつく訳でもなく、何かを呟く訳でもなく、アルカはただ愁いを宿していた。
『何かあったら呼んでね』
その言葉に秘めたもう1つの意味に、アルカは気づいただろうか。
1人で抱え込まないで、辛く悲しくなったら呼んで―――――――。
(ミラに迷惑かけちまったな・・・忙しいのに呼び止めるとか)
カラコロとグラスの中の氷を揺らし、アルカは小さく溜息をついた。
ここ数日、自分でも解るほど調子がおかしい。
面白い物を探すセンサーの調子は本日も良好だが、アルカ本人の調
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