第十一話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その5)
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
は爵位、領地の剥奪?」
リヒテンラーデ侯が顔を顰めた。
「それも無理だ。たちまち野垂れ死にだろう。それくらいなら賜死という形で名誉ある死を与えた方が良かろう」
「そうですね」
宮中でしか生きられないか……。貴族は力を持っているかもしれない。しかしひ弱で脆弱だ。貴族でなくなった瞬間から弱者に転落する。彼らが貴族であることを尊びそれに執着するのはその所為かもしれないな……。
「まあ証拠を突きつけ次は容赦せぬと釘を刺すしかないな。それと領地の一部召し上げ。今後、侯爵夫人は二十四時間監視下に置かれるだろう。陛下にもご理解いただく」
まあそんなところだろうな、消化不良になりそうな処分だな。
「ではコルプト子爵も死罪は有りませんか」
俺の言葉にリヒテンラーデ侯が頷いた。
「夫人を死罪に出来ぬ以上、子爵も死罪には出来ぬ。本来なら死罪だが本人が反省し自首してきたという事、捜査に協力したという事で罪を減じる。まあ謹慎の他、領地の一部召し上げ、その辺が落としどころだろう」
「ブラウンシュバイク公爵家はコルプト子爵家との付き合いを元に戻しませんよ」
俺の言葉にリヒテンラーデ侯が頷いた。
「なるほど、その方が良かろう。どんな処罰よりも厳しく感じるはずだ。卿、良い事を考えるな」
残念だな、御老人。あの馬鹿の顔を二度と見たくない、それが真の理由だ。
「陛下にお話しする前に我らの間で今の事を確認しておきたい。今宵、卿の屋敷で会合を持ちたいと思う。リッテンハイム侯に伝えておいてくれ」
「それは構いませんが……」
俺が言葉を濁すとリヒテンラーデ侯は訝しげな表情を見せた。
「ミューゼル大将はどうします」
「結果だけ伝えれば良かろう」
リヒテンラーデ侯が顔を顰めている。やはりこの老人、ラインハルトを好んでいない。
「出来れば彼を味方に取り込みたいのですが」
「ふむ」
「幸い名目は有ります。伯爵夫人に対する嫉妬が原因ですからね」
「なるほど……。良かろう、そうしよう」
そう言うとリヒテンラーデ侯は妙な目で俺を見た。
「卿、大公に似ておるな」
「はあ」
「敵になる人間を味方に取り込む。ブラウンシュバイク公爵家はなかなか強かだ。敵に回すと手強い」
侯が笑い出す。なるほど、そういう意味か。一瞬何の事だかさっぱり分からなかった。
「大公が感心しておったぞ。あの小煩い連中を見事に黙らせたと……。なかなかの息子振りじゃな、ヴァレンシュタイン」
余計な御世話だ、好きで養子になったわけじゃないぞ。俺を養子にしたのはお前らだろうが、この陰険ジジイ。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ