第十一話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その5)
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
事を聞いてあの馬鹿を自首させろ。それがお前らのためだ。溜息が出た……。
■ 帝国暦486年 8月12日 オーディン 新無憂宮 エーリッヒ・フォン・ブラウンシュバイク
「御苦労じゃな、ブラウンシュバイク公」
国務尚書の執務室を訪ねるとリヒテンラーデ侯が笑みを浮かべて迎えてくれた。ソファーに座る事を進め、自ら飲み物を用意してくれる。紅茶だ。ココアでないのは残念だがコーヒーに比べれば遥かにましだ。しかしこの爺さんが笑みを浮かべると不気味だな。
「まさかあの連中だけではなく私まで調書を取られるとは思いませんでしたよ」
「そう言うな、リッテンハイム侯も調べに応じたのだ。もっとも侯は調書を取られるのは二度目か」
そう言うとリヒテンラーデ侯が声を上げて笑った。俺も笑わざるを得ない、その調書には俺も関わっている。
八月二日に行われた俺とヒルデスハイム伯達の会合の後、事態は急激に動いた。ヒルデスハイム伯達は自分の身が危ういと理解したのだろう、その後の行動は早かった。嫌がるコルプト子爵を説得し自首させた。
噂によるとヒルデスハイム伯達はブラスターをコルプト子爵の頭に突きつけて自首を迫ったらしい。コルプト子爵は泣きながら自首すると言ったと言われている。なかなか過激だな。
コルプト子爵の自首を受けた政府は慎重に調べ始めた。グレーザー医師、あの馬鹿貴族ども、リッテンハイム侯、そして俺……。但しベーネミュンデ侯爵夫人は取り調べを受けていない。
政府はこの事件の元凶が彼女だと認識している。彼女の不満がこの事件を引き起こした。しかし侯爵夫人は皇帝の寵を受けた女性であり、彼女の不満の源が皇帝の寵が失われた事であるとも認識している。不用意に彼女を調べれば皇帝の威信に傷が付きかねない。そこで周囲の取り調べを優先し証拠を十分に用意しようと考えている。彼女にはその証拠を突きつけ有無を言わせない。
今現在彼女の行動は制限されている。屋敷の周辺を警備と言う名目で警察が固め人の出入りは厳しく制限されているし、侯爵夫人その人は外出を許されていない。要するに謹慎、いや監禁に等しいだろう。
「捜査は終了ですか」
俺の言葉にリヒテンラーデ侯が頷いた。
「そろそろ終わりだ。皆取り調べに非常に協力的でな、誰かが酷く脅したらしい」
変な目で俺を見るな。侯の視線を無視して紅茶を一口飲んだ。
「問題はこの後ですが、処分をどのようにお考えです?」
俺が問いかけるとリヒテンラーデ侯は左手で顎を撫でまわした。
「うむ、それよ。陛下のお気持ちを考えると死罪と言うのは出来れば避けたい」
まあそうだな。今はともかくかつては子を儲けるほど愛した女性なのだ、死罪では寝覚めが悪いだろう。まして原因は皇帝が彼女を捨てたことに有るのだ。
「で
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ