第十一話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その5)
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っていない様だ」
「……」
エーリッヒの言葉に皆が顔を見合わせた。彼らの顔には明らかに不安が浮かんでいる。
「コルプト子爵は反逆者と呼ばれても仕方のない行為をした。その所為でブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家から関係を断たれた。その事は皆が知っています。政府もです」
「……」
「ブラウンシュバイク公爵家がコルプト子爵を告発すればコルプト子爵は反逆者として処断される事は間違いありません。証人はグレーザー医師と私、充分すぎるほどの証人でしょう。それをしないのはコルプト子爵へのせめてもの情けです」
エーリッヒの言葉に皆が訝しそうな表情をしている。エーリッヒが何を言いたいのか、分からないのだろう。少しは頭を使えよな。
「当家が政府に訴え出る前にコルプト子爵は自首すべきだったのです。そして全てを話し慈悲を願うべきだった。そうであれば情状酌量の余地も有ったのに……」
「……」
エーリッヒが一つ溜息を吐いた。そして憐れむような表情で六人を見る。
「コルプト子爵は愚かにも徒党を組み反逆を推し進めようとした。先ず自分への嫌疑を逸らす為ブラウンシュバイク公爵家とリッテンハイム侯爵家に関係を元に戻すようにと迫った」
ギョッとしたような表情で六人がエーリッヒを見ている。
「ブラウンシュバイク公、それは曲解です。我らはコルプト子爵の反逆に与してなどいません。ただ彼を哀れだと思い……」
慌てたようにヒルデスハイム伯が弁解した。他の五人も口々にヒルデスハイム伯にならって弁解する。
「残念ですね」
「……」
「貴方達が何を考えたかではありません。周りからどう見えたかです。私が思うに貴方達はコルプト子爵の一味ですよ。反逆者ですね」
「そんな」
情けない声を上げるなよ、ヘルダー子爵。
「先程言いましたが政府も既にコルプト子爵の事は知っている。そして関心を持って見ています。彼の、そして貴方達の行動が政府にどう見えたか」
「……」
「アンスバッハ准将」
「はっ」
「卿から見てこの六人はどう見えました? 正直に答えて下さい」
アンスバッハ准将が一瞬だけ六人を見た。皆縋りつく様な表情をしている。
「反逆者ではないのかもしれません。しかし……」
「しかし?」
「反逆者と取られても仕方ないと思います」
彼方此方で呻き声が起きた。上手いよな、アンスバッハ准将。一度希望を与えておいて次に絶望を与えるか……。流石は根性悪。この部下にしてこの主君ありか。
「貴方達が助かる方法は一つしかありません。直ぐにコルプト子爵を説得し自首させることです。それはコルプト子爵を救う事にもなるでしょう。急ぐのですね」
「……」
馬鹿が六人呆然として顔を見合わせている。残念だな、所詮お前らはエーリッヒの敵じゃない、素直に言う
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