第十一話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その5)
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上げたのか? 段々腹が立ってきた、落ち着け、腕を叩いて落ち着くんだ……。
■ 帝国暦486年 8月 2日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 アントン・フェルナー
拙い、エーリッヒが腕トントンをやっている。本人はあれで怒りを抑えるなんて言ってるがあれがでたら三回に一回は爆発するんだ、全然抑えになってない。あれは噴火五分前の合図と見た方が良い。……いかんな段々腕を叩く速度がゆっくりになっていく、危険な兆候だ。
応接室は静まり返りエーリッヒの腕を叩く音だけが聞こえる。テーブルの上には甘いものを置いたんだがエーリッヒは見向きもしない。効果なしか……、新しい手を考えておかないといかん。それにしてもこいつら何しに来た? このまま黙りこくっている気か?
普段エーリッヒを成り上がりとか平民とか、ヴァレンシュタインとか陰で言っている癖に本人を目の前にするとこれか……。まあ色々有るからな、リッテンハイム侯爵邸の一件とか黒真珠の間の一件とか……。相手が誰だろうとエーリッヒは容赦しない。そういうのを見てれば確かに怖いのは分かる、分かるがあまりにも頼りにはならんな。エリザベート様の婿にエーリッヒを選んだのは正解だ。
異様な雰囲気に耐えかねたのか、ヒルデスハイム伯が恐る恐ると言った口調で話し始めた。
「コルプト子爵の事ですが出入りを禁じ一切の関係を断つとはいささか極端ではありますまいか。コルプト子爵家はブラウンシュバイク公爵家にとっても近しい一族のはずです。公の御一存で……」
最後まで伯は話すことが出来なかった。
「ヒルデスハイム伯」
「はっ」
エーリッヒが腕を叩くのを止めた。
「コルプト子爵は反逆と言って良い行いをしたのですよ。その事を伯はお分かりではない様だ」
冷たい声だ、そして厳しい視線だ。ヒルデスハイム伯はそれに耐えられないかのようにうなだれている。
コルプト子爵ではなくコルプト子爵家か……、そしてブラウンシュバイク公爵家。個人ではなく家の問題にすることで養子であるエーリッヒが勝手に決めて良いのかと言いたかったのだろうが……。姑息だな、話にならん。
「コ、コルプト子爵は本心ではなかったと言っています。つい興奮して愚かな事を言ってしまったと」
今度はホージンガー男爵だ。愚かな奴、もう少し考えてから口にしろ。
「私はグレーザー医師から全て聞いているのです。コルプト子爵の行動は弁解できるものではありません」
「しかし、卑しい医師の言う言葉など」
「口を慎みなさい! ホージンガー男爵。グレーザー医師は宮廷医ですよ、それを卑しい? 何を考えているのです」
厳しい叱責に今度はホージンガー男爵がうなだれた。駄目だな、話にならん、何も言わずにもう帰れ。
「どうもここにいる人達は状況が分か
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