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ネギまとガンツと俺
幕間 第29.5話「空話〜謝罪の言葉〜」
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 どこかウキウキとした彼女の声に、満更でもない息を漏らす俺がいたことを、俺は確かに気付いていた。




 広場の高台で待ち合わせをすることを決めて、一旦別れる。

 仕事終わりまでまだまだ時間が残っている。

 告白阻止に身を委ねつつ、俺の思考はやはりこの後のデートへと向かう。

 ――これで良かったのかもしれないな。

 今回向こうから誘ってくれたということは少なくともある程度の好意をもたれていることは想像できる。

 それが友人としてか、はたまた異性としてかはまた別の話だが。

 もし今回の騒動がなければもしかしたら、いい線までいけたかもしれない。

 ――少し……というか、男としては大分惜しいが。

 だが、これがいい機会だ。

 彼女が好きだから。

 自分は遠からず死ぬことになるだろうから。

 しっかりと、別れを告げよう。




 そして、時間が来た。

 既に心は硬く、固く、堅く。

 目的地に到着した自分を待っていたのは幾分緊張した面持ちの彼女。

 そんな微笑ましい姿に、だが、何も言わない。

「ほら」

 そう言って手を差し出す彼女の手に、まるで山の中での出来事を思い出す。


『夕餉でもどうでござるか?』
『晩飯か?』
 まるで付き合ってるみたいだ、と楽しくも自惚れていた。


「……」
 彼女の手をジッと見つめる。


『よし、それじゃあ行くでござる』
『行くって……どっ!?』
 あの時に繋いだ手のぬくもりはきっと、忘れないだろう。


「タケル殿?」
 首を傾げる楓に、俺はあえて自分の手を彼女の手へとむける。


『楓って……呼んでもいいか?』
『……いいでござるよ?』
 そう、この時彼女に恋をした。


 だから、しっかりと――

 楓の手を掠めて、後ずさる。

 触れ合うのは一瞬で、俺と楓の行く道はこれから先に交わることはない。

 唖然とした彼女の顔が胸に痛い。

 ――俺が恋した最初で最後のキミへ。

「さよなら、と。それだけを言いたかった」

 そして

「明日で、学園を去る」

 告げる。

「キミといる時間が一番温かかった」

 トボトボとこちらに足を向けて、腕を伸ばす楓の動きがまるで機械人形のようにぎこちない。

「もう、会うこともない」

 告げる。

「俺は確かに……キミに恋をしていた」

 彼女の目が大きく見開かれた。

「だから、さようならだ」

 電力が切れたように、そのままで完全に停止した楓を背にして数十Mもの高さを誇る高台から一気に飛び降りる。

「……」

 何かを堪えるかのように目
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