第六十話 ハロウィンの前にその四
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「巨人の敗北を見たら元気が出るだろ」
「はい、特に阪神に負けると最高です」
「物凄く元気になります」
「だからな、巨人が負けて阪神が勝つとな」
今年の様にだ。
「日本はよくなるんだよ」
「今年みたいにですね」
「そうなるんですね」
「そういうことなんだよ。先生なんてな」
先生は昔を懐かしむ目になった、そのうえで宙を見つつ言うのだった。
「長い間我慢したからな」
「暗黒時代ですよね」
「あの頃ですよね」
「日本一から二年後だったな」
つまり八十七年、昭和六十二年だ。その年からだったのだ。
「最下位になってな」
「それからですよね」
「ぶっちぎりの暗黒時代だったんですよね」
「本当にぶっちぎりだったな」
暗黒時代にもこの言葉は当てはまるのだ、負けて負けて負けまくるということについてもぶっちぎりになるのだ。
「阪神はな」
「ダントツの最下位ばかりで」
「それででしたよね」
「打たなかったな」
暗黒時代の理由はこれだった。
「最初は投手陣も駄目だったけれどな」
「そっちは立ち直りますよね、阪神」
「それもすぐに」
「阪神はピッチャーはいいんだよ」
伝統というものだ、先生もこのことはわかっている。
「けれどな」
「幾ら点を抑えても打てないと勝てない」
「そういうことですね」
「あと一点か二点なんだよ」
今度は悲しい口調で言う先生だった。
「いつもな」
「それで勝てるんですよね、阪神って」
「一点か二点あれば」
「あとそれだけ取ってくれたら」
「本当に勝てるんですよね」
「それがな」
その一点二点が取れないでなのだ。
「駄目でな」
「負けていってるんですよね、いつも」
「毎回毎回」
「去年まではな」
実際に一点二点で負けていたというのだ、昨年までの阪神は。
「三対二とか二対一とかばかりだっただろ」
「あと三対一とかですよね」
「一対零とか」
他には二対零もある。阪神が負ける時の点差はこうした点差で負けていることがとにかく多いのだ、それも毎年。
「そういうのばかりでしたね」
「けれど今年はその一点二点が取れてるからですよね」
「阪神勝ってるんですよね」
「それも圧倒的に」
「年にどれだけ打てないで負けていたかだよ」
ダイナマイト打線が代名詞である筈のチームでもだ。
「それがわかるよな」
「はい、よく」
「もうそこに出てますよね」
「阪神らしいですけれど」
「本当に」
「それが変わったんだよ」
今の阪神はというのだ。
「まさにな」
「それで今年からですね」
「阪神は勝っていくんですよね」
「十連覇ですね」
「これまでどのチームもしなかった」
「それでそうなればな」
先生の顔が戻っていた、これまでの悲しい過去を
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