第29話「麻帆良祭〜別れの言葉〜」
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る。
彼と別れて約半日、それまでの間に色々とイベントが巻き起こっていた。
見回り終了後すぐに、アスナがタカミチ殿に告白する場面に遭遇した。残念ながらその恋は実らなかったが、告白どころか一緒に回る約束を取り付けることですら一杯一杯だった自分からしてみれば驚嘆に値する勇気だった。
拙者自身の中で、大いに励まされたことは言うまでもない。
さらにこの後、23時過ぎからは急遽学校をやめることになったらしい超鈴音とのお別れ会が催されることになっている。
なにやら彼女もきな臭い様相を見せているようだったが?
いや。
今はそんな難しいことを考えるのはよそう。
「もう、そろそろでござるか?」
気付けば時刻は午後8時、待ち人がいつその姿を現してもおかしくない。
既に周囲は暗く、喧騒慌しかった学内も今や2日目終了へ向けてロマンティックなムードが流れ始めていた。
ここ、広場の高台は麻帆良の中でも最も大きな高さを誇っており、それは既に観光地としてもある種有名なスポットと化している。
まるで星々を手につかめんばかりの位置から空を一望でき、下に目を向ければ民家の家々に灯された光が一面に広がっている。
「……きれいでござるな」
そもそもの場所が高いせいで風が強く吹く。それによって揺れる髪を片手で押さえながらぼんやりと天地の星々を見つめる。
――こんな場所で待ち合わせるのは、まるで俗に言うカップルみたいではないか?
ふと思い浮かんだ考えに、気持ち良く涼んでいた彼女の顔が一気に赤くなる。
「いかんでござるな」
なぜかいけない気がして自分を戒めるように言葉を呟く。顔をそらし、再度時計に目を配ったところで――
「……スマン、待ったか?」
――現れた。
彼なりに急いで来てくれたのだろうか。
いつも通りの何を考えているのかわからない無表情だが、息を切らしているその珍しい姿に嬉しくなってしまう。
彼の問いには首を横に振って答える。
色々と考えていた。タケル殿が来たら、まずは昼間に、いきなり姿を消してしまった件について文句を。それから最近姿をみせないことの疑問や、どうして教師となったかetc
けど、それらはいつの間にか頭から消えて、まるでそれこそ用意していた言葉を吐くようにスムーズに。
「そんなことよりも学園祭がそろそろ終わり始めるころ。早く行かないとほとんど見てまわれなくなってしまうでござるよ?」
――ほら?
さっきまでアレコレと考えていたことが馬鹿らしくなるほどに自然と。
かつて山の中で彼の手をとったように。
今日という日もまた同じように、だが確かに別の色が自分の胸を覗いてい
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