第29話「麻帆良祭〜別れの言葉〜」
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トロール……よし。
狙い通りの位置にいっていることを確認し、再度鳴り響く告白生徒探知機の指示に従い、行動に移る。
慣れてしまえばほとんど機械作業なので、考え事をする余裕もできる。
新たな人間をぶん投げ、確認のためにその行方に目を配りつつも、先ほどからそういった男女間の一大イベントを目の当たりにしているせいかもしれない。気付けば俺は彼女へと思いを馳せてしまう。
楓は今頃、誰かと学園祭を回ってる頃だろうか。少しくらいは彼女と一緒に学園祭を回ってみたかった気もしないような気もする。
自分が『らしくない』というのも分かっているが、こればっかりはどうしようもない。
なぜか頬が熱い。鏡を見れば自分の頬が赤くなっているだろうことが簡単に予想できてしまう。
だが、今の俺はそんなことに心を寄せるだけ無駄で意味がない。
初めての感覚に身を焦がしつつ戸惑いを覚えていた俺も、自嘲気味に肩を落とす。
もう会うこともない人間を考えても仕方ない、か。
女子中等部の教師として勤めているのは明日で最後。既にそういう手筈になっているはずだし、また、そうなるように学園長にもお願いを、済ませていた。
今日と明日と、超鈴音の一派以外ではネギも含めて3−Aの人間と関わりあうつもりは一切ない。
それにはもちろん、楓という例外もない。勝手に彼女達の前からいなくなるのは少し申し訳ない気もする、が、それだけのこと。彼女達にとって不都合が起こるわけでもないだろうから精々一日程度騒いで終わりだろう。
そんなことをつらつらと考えながらも滞りなく告白阻止に成功していたのが逆によくなかった。いわゆる気を抜きすぎていた、という状態だった。
「しまった」
いつの間にか、3−Aの生徒の一人、桜咲さんが担当している区域付近まで来ていた。早く去ろうと向きを変えて――
「――あ、タケル先生!」
「!! タ……ケル殿!?」
見つかった。しかも、なぜか楓まで一緒にいる。
異様にどもった彼女が少し気になったが、そんな些細なことは一瞬で俺の頭の片隅に追いやられることになった。
「ゲ」
「「げ?」」
つい呟いてしまった言葉に、二人して仲良く首を傾げる彼女達は愛らしい。普段ならドツボにはまっているだろうが、今日はそういう気分にはならない。
むしろ、この雑踏の中で自分にも聞こえない程度の声量だった呟きに反応できる彼女達の異常さに突っ込みを入れたくなる。
適当な言い訳をしてさっさと去ろうと思う反面、足が動かない。もちろん、原因が桜咲さんの横にいる彼女にあることは自分でも理解している。
せめて告白生徒探知機が反応してくれれば、仕事を口実に去ることが出来たのかもしれないが
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