第29話「麻帆良祭〜別れの言葉〜」
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姿を現さなかったので、その」
――姿を現さなかった?
その言葉に、刹那の脳裏にすぐにある人物の姿が思い浮かんだ。
3―Aにはお祭り好きな人間が多い。馬鹿騒ぎが出来そうな場には呼ばれなくとも気付けば参加しているような、そんな集団。
だからこそ欠席しているような人間は片手で数えられるほどに少なく、すぐに分かる。その上、楓が顔を赤くするようなこととなれば、いくら朴念仁の刹那でも思い当たるというもの。
――なるほど。
理解し、微笑む。
「……タケル先生か?」
「!?」
びくりと背筋を震わせ、薄く赤みがかっていた顔が恥ずかしさからか茹蛸のように真っ赤に染まる。
「い、いいいいやその」
動揺からだろう。
ドもる楓など滅多に見れるものでもない。
「そういえば、私も武道会の予選から見ていないな」
確かにタケルは武道会本選を楽しみにしているとも思えるような発言を残していたのだが、激励に来るでもなし、観客席の中にすらその気配を認めた人間はいなかった。
とはいっても、実際には超鈴音と揉めていたのであり、本選を見に行かなかったのではなく、ッ見に行くことが出来なかったのだ。
だが、当然そんなことを彼女達が知る由もない。
――そういえば、タケル先生もこの時間は見回りのはずだったような?
「ん……見回り?」
すっかり忘れていたその言葉を、刹那は今更ながらに思い出してその顔を青くさせた。
慌てて時計に目を配り、予想通りの時間になっていることに「あ」と呟いた。
時計の針が13時を過ぎていたのだ。
もっと楓の話を聞いていたいのは山々なのだが、これから告白阻止の見回りが刹那を待っている。
――とりあえず謝って仕事に移ろう
そう考えた時だった。
――ん……いや。
それはカタブツと評される彼女にしては機転が利いた考え。
「楓、スマナイが今から仕事があるんだが、手伝ってくれないか?」
「……仕事?」
尋ねる楓に、刹那は大きく頷いて見せた。
麻帆良祭2日目の午後の部。まだまだ日差しがきつい真っ昼間。
俺は教師として、危険域での告白阻止にいそしんでいた。
さすがに初日よりもこの機を狙っていた人間が多いらしく、昨日よりも見回りの人数が強化されているにもかかわらず忙しさは変わらない。
告白TIMEの夕方が少し不安だな。
自然と思い浮かぶ恐ろしいほどの忙しさに、背中から冷や汗が出ていた。
ピピ
「また」
告白しようとしているその人をぶんなげ、いきなりのことに驚いている告白されようとしていたその人もついでにぶん投げる。
コン
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