三十 狐雨
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りしてきたのだろう。目をぱちぱちと瞬かせたと思うと、身体を小刻みに揺らし始める。
「………や、」
「や?」
思わず聞き返すナルトの前で、ナルはぴょんっと飛び跳ねた。同時に万歳する。
「やったってばよ―――――――っ!!」
喜色満面の笑顔で口寄せしたばかりの蛙を抱きかかえる。ダンスを踊るかのようにくるくる回るナルを、ナルトは微笑ましげに眺めた。暫く回っていた彼女だが、不意に蛙を小岩に降ろす。
ナルトの手をぎゅっと握る。驚いたナルトが手を放すより先に、ナルは先ほど同様くるくると回り出した。彼女につられてナルトも回る。
双方の顔はそっくりだが浮かべる表情は対照的だった。困惑するナルトと、満面の笑みを浮かべるナル。
一頻り踊って満足したのか、ナルはナルトの手を放した。輝く笑顔で「ありがとだってばよ!」とお礼を告げる。
「おかげで【口寄せの術】が成功したってば!ほんっとうに助かったってばよ!!」
「い、いや……」
ナルの手放しの喜びっぷりに、ナルトは口ごもった。動揺を見せる彼に気づかず、ナルは自身が口寄せした蛙にもお礼を言う。
「ありがとだってば!オレの名前は波風ナルだってばよ」
「ボ、ボク…ガマ竜」
しゃがみ込んでこちらの顔を覗き込んでくるナルに、蛙の子――ガマ竜は若干の照れを含みながら名前を言った。そしておそるおそる「ボ、ボク、初めて口寄せされたんだ…」ともごもご呟く。
「オレもそうだってばよ!また呼ぶかもしれないからその時はよろしくな!!」
ガマ竜の消え入りそうな声をしっかり拾って、ナルはにかっと笑った。彼女の言葉にほっとしたのか、ガマ竜は「また呼んでね〜」と手を振りながら帰っていく。ちゃっかり「今度会う時はお菓子が欲しいな〜」とおねだりしながら。
ぽんっと立ち上る白い煙。
未だ実感が湧かないのか、ナルは暫しその煙を見つめていた。やがて顔を上げる。ナルトと目が合うと、彼女は再び破顔した。
「お礼に一楽のラーメン、奢るってばよ!一緒に行こうってば!!」
「え…」
ウキウキとしたナルに手を引っ張られ、ナルトは踏鞴を踏んだ。「一楽のおっちゃんのラーメンは世界一なんだってばよ〜」とにこにこ語るナルの話を聞きながら、ナルトは目線を落とす。
自分と繋がれている手。その小さくてあたたかい手を彼はまじまじと見つめた。
ふと手の甲に落ちてきた雫。全く同じ仕草で二人は空を仰いだ。丘から流れてきた雲から、ぽつぽつ落ちてくる雨滴。
未だ日は照っているのに降り落ちる雨を見て、ナルがはっと息を呑んだ。顔前で懇願するように手を合わせる。
「ごめん!オレってば、帰って洗濯物取り込まないと…っ」
幼き頃からずっと独り暮らしである彼女は家事も自分でこなさなければならなかった。洗濯もその一つだ。早く帰らなければ修行へ行く
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