三十 狐雨
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髪の合間から覗く双眸が、再不斬を鋭く射抜いた。
「あまり三忍を舐めるなよ、小僧……ッ!!」
「お前さんは霧隠れに引き渡す」
「そいつは勘弁被るなぁ……」
自来也の怒りを間近で感じ、改めて三忍との力の差を思い知る。冷や汗を掻きつつも、再不斬は秘かに会心の笑みを浮かべた。
彼は自来也が断るであろう言葉をわざと述べたのだ。条件など何だってよかった。自来也をこの場に足止めする事自体が、再不斬の役目だったのだから。
ナルトが波風ナルと接触する間の時間稼ぎ。全てはそのためだけに。
自然と後退する足を地に固定させる。浮かべた薄笑いはどこか引き攣っていた。それでも無理に笑いながら、再不斬は言葉を続ける。
「自来也さんよぉ…。あんたを相手に、この俺独りだと思っているのか?」
「……そこの木陰にいる一人と、岩陰に潜んでいる二人の事か?どいつも実力的に精々中忍レベルだな」
案の定見破っている自来也に、再不斬は再び戦慄を覚えた。(まるで取りつく島がねえな、こりゃ…)と諦めたように頭を掻く。
木陰に白、岩陰にドスとキン。前もって三人を待機させておいたのだが、無駄に終わったようだ。不意をつけるかと思ったが、正確な位置までバレているのならばどうしようもない。
ドッドッと心臓が高鳴る。込み上げてくる恐怖を再不斬は無視出来なかった。
自来也の存在感に気圧されそうになりながら、心中恨み事を吐く。
(…ったく。恨むぜ、ナルト…!お前と違って俺は交渉事にゃ向いてねえんだよ……ッ)
ゴクリと呑んだ唾が、カラカラとした咽喉をゆっくりと伝っていくのが分かる。酷く喉が渇いていた。
自来也がゆっくりと歩み寄る。その一挙一動を再不斬は凝視した。首切り包丁に伸びる手。
黒雲が丘の斜面に影を落とした。対峙する両者の頭上に近寄ったかと思うと、気紛れにも泣きだし、そして遠ざかる。
突然の通り雨に降られ、再不斬と自来也の髪に雫が伝う。全身濡れ鼠となった男達だが、どちらも微動だにしなかった。瞬き一つしない。
殊更緩慢に、自来也が身動ぎする。今にも印を結ぶ素振りを……――――――。
「お―い!」
突然割り込んできた声に、その場の緊張の糸が一瞬にしてブチ切れた。弾かれたように顔を向ける。二人の視界に、丘へ駆け上がってきた少年の姿が映り込んだ。
「おっちゃん、助けてくれよ!」
「お、おっちゃん…!?」
自来也に向かって一目散に駆け寄った少年が、縋るように袖を掴む。唐突に求められた助けと「おっちゃん」という言葉に自来也は目を白黒させた。だが少年の次の言葉を耳にした途端、顔を引き締める。
「女の子が柄の悪い男達に囲まれてんだ!」
(…
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