第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
三十八話 罪と罰と…
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の目を閉じ生気の無い人形の様になったこいしをその商人は使い物にならないとして処分しようとしたのだそうだ。
それに気付いたさとりは何とか屋敷からこいしを連れ逃げ出したが、空も飛べず何より人形の様に動こうとしないこいしを伴っては逃げ切れる筈も無く逃げ込んだ山中で商人が放った追っ手に捕まった。そして気が立っていた追っ手達が捕まえたさとりに乱暴しようとした所を本当に偶然その辺りを飛んでいた私が見つけたのだ。
そしてあれから一週間経つがこいしの第三の目が開く気配はなく、さとりは健気に人形の様なこいしの世話をしている。さとりが言うにはこのまま第三の目が閉じたままだとこいしが死んでしまう可能性もあるという。
そんな風に考え事をしていたら何時の間にか家の前まで辿り着いており、私は玄関を開け「ただいま。」と声をかけながら家の中へと入った。今まで一人だったせいか未だに「ただいま。」という言葉に少し気恥ずかしさがある。
私はそのままさとり達に貸している部屋の前に移動すると部屋の扉が少し開いており私はその隙間から部屋の中を覗き見てみる。
中ではさとりが食事をスプーンで掬いこいしの口元に運んでいた。
「さぁこいし、ご飯よ口を開けて」
さとりの声にこいしはうつろな目をしながら口を開きスプーンを口に含んだ。そんなやり取りを数回こなした直後さとりは碗とスプーンを投げ出しこいしを抱きしめた。
「お願いこいし!お願いだから声を聞かせて!お願いだから笑って!お願いだから私の大好きなこいしに戻って!お願い……お願い…だから……」
さとりは目から大量に涙を流しながらこいしに対し必死にそう懇願している。この一週間何の変化も見せないこいしの姿にさとりの精神も限界がきているのだろう。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…守ってあげられなくて…ごめんねこいし…こいし…もし貴方が死んだら…私も死ぬから…絶対に一人にしないからね…私達はたった二人だけの家族だもの……」
こいしを胸元で抱きしめ髪を撫でながらさとりはそう呟いていた。私はさとりの「家族」という言葉に記憶を掘り返されていた、思い出したくも無い嫌な女の言葉を。
何故分からぬのだ愛しき娘よ?
煩い!あんたのいう事なんて聞かないわよ!
悲しいな、母はそなたの事をこんなにも愛しておる故に忠言しておるのだ。。
知った事じゃないわね!もう二度と会う事もないでしょう!
慈しむ事しか出来ぬそなたに真の愛は手に入らぬよ愛しき娘。
訳の分からない事を!
…何時か分からねばならぬ日が来よう、まぁそれまで好きに生きるのも悪くあるまい。
私は知らない内にさとり達の元へと歩み寄っており二人を抱きし
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