自称王と他称王
八話
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で、遅れて掛かった重さによろけ尻餅をついてしまう。
「おおっと……おうっ!?」
ついでに尾てい骨あたりを軽く打った。
予期せぬ刺激に耐える最中、右手が何か柔らかいものを握っている事に気付く。加えて触り心地もとても良い。
目を向けてみると、暫し思考が停止した。
「………………」
アインハルトの防護服はボロボロで、最早服を着ているとは言えぬ状態。そして右手が握る実った膨らみは丸見えで、指の間からは淡い果実も見える。身体は大人で心は思春期中の子供なアレクは、一切目が離せない。
そういやこいつ女なんだっけ、と再び動き出した脳が今更な事を考えるが、手はまだ放さない。放すどころか、これは経験の所為、とアレクは理由付けて何度か揉んでいる。ギャラリーに背を向けているので、バレやしない。
だが、勝利の美酒はすぐに終わった。アインハルトの姿が光と共に縮み、膨らみかけに戻り、服も戻ってしまった。
そこへ、逸早く来たティアナの声が掛かった。
「アレク、アインハルトは!?」
「へいっ!? ……え〜と、拙者が見た感じ、大丈夫そうでござんした」
「そう。……まあ、何してたか今は訊かないであげるわ。――――今は、ね?」
「………………へい」
後で説教ですか、とアレクはバレていた事に肩を落とす。凄まじい敗北感だった。
◆ ◇ ◆
夕食後、ヴィヴィオは自室に戻らずに居間で足をぷらぷら揺らしていた。
頭に浮かぶのは、昼間のアレクとアインハルトの試合内容。
またアインハルトが奇襲して見てる方を吃驚させたが、当のアレクは見透かしたように対処していた。
そして少しの会話後に試合が始まったが、今思い返してみると、……試合ではなかったように思える。途中の会話で戦場という言葉が聞えたが、それも合っているようで合っていない気がする。戦いだった事だけは確かだと思うけれど。
アインハルトは兎に角倒そうとしていて、アレクは粉砕しようとしていた。どちらも戦い方なんて気にしないで、ただそれだけを成そうとしていたような気がする。
そして対峙していた視線も、合っていなかったような感じもした。
ふと、アインハルトがアレクを別名で呼んでいた事を思い出した。アレディ・ナアシュ、そう何度も呼んでいた。初代覇王イングヴァルトの関係者、そして王というのは間違いないだろう。でなければアインハルトが執拗に追う筈がない。
だからアインハルトはアレクをその王と見据えて戦っていた。最後はアレク本人を見るようになっていたけれど。
だが反対に、アレクがアインハルトを見なくなっていた、一度倒れてから様子が変だった。
地団駄を踏んだあたりではカウンターを入れられた事に憤怒していたと思っていたが、最後の龍を出す前後で印象は一変した
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