自称王と他称王
八話
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ウス、私は……)
薄れ行く意識の中で、アインハルトはとうとう敗北を受け入れた。
また敗れた。また届かなかった。悲願を果たせなかった。幾つもの苦渋と申し訳なさが頭を過ぎる。
だが、たった一つだが、成し得たものがある。
クラウスを下した業を破った。これは、確かだった。これは、誇って良い……事だろうか。
(誇る事を、許してくれますか……?)
クラウスが笑った。意識を失う直前、そんな幻想をアインハルトは見た、気がした……。
一方アレクは、拳を突き上げた状態で耐えていた。轟覇機神拳はアレクの意思で撃ち放ったが、これで終わる事を身体が良しとしていなかった。
手甲が開き、見出でた漆黒の甲に幾つもの線が走る。まだこの業には先がある、放て、解き放て! と戦闘経験を得た身体が疼き、叫んでいるのだ。
そして、身体が成長すれば各器官も相応に成長し生み出せる覇気も増えるので、今、腰溜めの拳を上に振るえば、恐らくソレは具現化し、アインハルトを喰い千切るだろう。
その行為はアレクの意思でも望む事ではないが、逆らえ切れない。段々と腕が上がっていく。
「ぐ、ぬぅ……お、お、お……」
――放て! 覇を成す龍を解き放て!!
「うおあああああああああっ!!」
遂に振り上げられた拳から、人一人を容易く龍の顔が生まれ出た。次いで体も成されて行き、拳から飛び去った。
龍は荒々しく、落下を始めたアインハルトに牙を突き立てんと昇る……が、自由を取り戻して即座に跳んだアレクに尾を掴まれた。
「俺のもんなら俺に従いやがれってんだ、こんボケェッ!!」
自棄くそ気味に龍を振り回し、渾身の力を持って明後日の方向に投げ飛ばす。
そのまま死凶星の彼方まで飛んで行け、と次第に小さく成って行く龍にアレクは落下しつつ中指をおっ立てた。
そんなアレクを観戦している面々は、いったい何をしているんだか、と惚けるやら呆れるやら何とも言えない顔をしていた。
ティアナも呆れた顔で溜め息を吐いていたが、視界の端に映った姿に、事態はまだ終わってない事に気付き声を張り上げる。
「アレク! アインハルトを受け止めなさい!!」
「見たかアレデ――へい?」
「バカしてないで上を見なさい!!」
「上? ……おお!?」
完全に勝負の内容が入れ替わっていたアレクは着地と同時に明後日の方向に勝利を叫んでいたが、ティアナの指摘で自分が空高く飛ばしたアインハルトの存在を思い出す。
ティアナが気付いてすぐにリカバリーを掛けたので、アインハルトの落下はある程度減速していたが、既にアレクの眼前に迫っていた。
驚きつつもアレクはなんとか受け止める事に成功する。ただ、安定しない姿勢で受け止め、ティアナがリカバリーを解いてしまったの
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