64限目 大切なもの
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、分かったわ」
母の答えは賛成。つまり明久の移住を認めるだった
「ありがと。母さん」
「あなたも言いたいことあるんじゃない?」
今まで黙っていた父がいよいよ口を開いた。
「アキの言いたいことは分かった。どれだけの思いでこの結論に達したかも分かった。だから敢えて言わせて貰う。俺は反対だ」
なんと、母も姉も賛成だったはずなのにここにきてまさかの父の反対があった
「何で?父さん?」
「お前の話を聞いてると、お前がどれだけ坂本君たちを大切に思ってるのかがわかる、皆の将来を守るためだろ?」
父の問いに明久は再び首を縦に振った
「いいか、明久。将来というのは、今という現実の延長なんだ。今どういう行動ととるかによって将来は大きく変わるものだ。だから明久がこのまま一緒に海外に行っても危害が及ぶのは変わらないかもしれない。将来の事は誰にも分からない。そんなもんだ。
だから将来の事を考えて行動するのも大事だ、だか、それよりも大事な事がある。それが何か分かるか?明久」
今回の問いには首を横に振った。
「それは、今、明久がどうしたいかだ。」
それは明久がどう考えてもたどり着かなかったもう一つの選択肢。明久は今まで『何をすべきか』をひたすらに考えていた。自分を犠牲にすると事しか考えてなかったからだ。
「明久の言いたいことも分かる。だが、明久お前は1人か?」
父の問いは明久の曇った心をどんどん晴らしていく。今まで当たり前だった事。忘れていた事を確実に突いてくる。
「お前には頼れる仲間はいないのか?お前という存在を受け止めてくれる人はいないのか?」
それは、雄二、秀吉、ムッツリーニ、姫路さん、美波、Fクラス、文月学園の皆
今まで忘れていた『誰かを頼ること』それを父は完全に明久に思い出させた
「どうせ守るんなら、皆の目の前で堂々と守ってやれ!!それで守ってあの時なんて言われた?」
皆を迎えに行ったとき、皆から言われたのは
「僕を信頼して待っていてくれたような返事だった」
「だろ?もう一度聞くぞ。お前吉井明久はこれから何をしたい?」
____もし、こんな事が許されるなら。いや。たとえ許させる事じゃなくても。
わがままかもしれない。でも僕は、僕は
「もう一度皆と一緒に普通の生活を送りたい」
これはもう皆のためとかそういう自己犠牲とかと取り除いたただの一般の高校生吉井明久の出した本当の真の気持ちだった
それからお母さんとお父さんはまた外国へ帰って行った。明久は父から一言だけ言われた
「自分の運命から逃げるなよ」と。
明久はこの半年で思ったことがあった。
朝、姉さんの過剰なスキンシップで起きる日常。いつも命がけの高校生活。クラスメイト達とのたあいのない会話。どんな些細な日常がどれだけ大切なものなのか。
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