第百五十七話 延暦寺その六
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「去る者は斬らぬ」
「しかし残る者はですか」
「何としても」
「そうじゃ、そのことを伝えよ」
こう言うのだった。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「それでは」
僧侶達も信長の言葉に頷くしかなかった、寺の一部を攻めると言われ反論したかったが信長の口調は有無を言わせぬものだった、それでだ。
大僧正の下に戻りこのことを伝える、すると。
大僧正は話を聞いてまずは難しい顔になった、そのうえで言うのだった。
「寺は焼かぬがか」
「はい、兵は入れぬとのことですが」
「二人と従わぬ者達を攻める為です」
「あの者達がこもる場所を攻めるとのことです」
「そう仰っています」
「左様か」
大僧正はここまで聞いて頷いた。
「ではそこも寺の一部じゃが」
「どうしてもと」
「有無を言わせぬご様子でした」
「何ということじゃ」
高位の僧の一人が歯噛みして言う。
「この聖山に戦が入るのか」
「左様です」
「例え一部ですが」
「そうなります」
「去りたい者は去れと述べられていますが」
「それは認められぬ」
難しい顔でだ、その僧は述べた。
「例え山であってもな」
「そうじゃ、どうもな」
「難しいのう」
「うむ、どうせよというのじゃ」
「このことは」
「一部とはいえ武士を城に入れられるのか」
「その様なことは」
他の僧達も言う、皆難しい顔になる。
しかしだ、大僧正は難しい顔でこう言った。
「いや、止むを得ぬ」
「ここはですか」
「一部とはいえですか」
「うむ、そうじゃ」
こう居並ぶ僧達に言うのだ。
「ここはな」
「しかしそれは」
「延暦寺としましては」
「どうしても認める訳にはいきませぬ」
「到底」
「そうは言ってもじゃ」
大僧正は難しい顔だがそれでも言うのだった、それは止むを得ないという顔で。
「このままではどのみち織田家は来る」
「だからですか」
「ここはですか」
「そうじゃ、それにあの二人は何とかせねばならぬのはこちらとて同じ」
妖僧を寺に置いておく訳にはいかぬというのだ。
「ならばじゃ」
「ではそれをですか」
「お許しになられますか」
「あの場にいる稚児や寺の者達は皆すぐにその場から去らせよ」
大僧正もまたこう言うのだった。
「むざむざ命を落とすこともない」
「ですな、それでは」
「すぐに呼びかけましょう」
「残る者は仕方がない」
元々寺の断にも従わぬ者達だ、それならというのだ。
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