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った一人に話をしに来てもいるんです。あなたがそうですよね?」
「あー……さっき外で大声で叫んでたの、そこの子だったのね」
すると女主人は、一度ペコリと先に頭を下げてから言葉を続けた。
「ごめんなさいね。呼び掛けは全部聞こえていたのだけれど、お店の事があるから、どうしてもここを離れられなくって……」
申し訳なさそうな女店主に、俺は首を横に振る。
「いえ、もう会えたからいいんです。この村でまだ調べていない最後の一人があなたで良かった。話が早く済みそうだ」
「…………ええ、そうね」
それを聞いた彼女は、微笑をそのままに眉と目の表情を曇らせた。
その表情の真意を、俺は図りかねた。
「あなた達が私に何を問いたいのか、それは分かってるつもりよ。……だから、先に言っておこうと思うの。私は――……あら?」
と、ここで彼女は言葉は途切れさせ、天井をじっと眺め始めた。
コツ、コツ、と誰かが上から階段を下りて来る音が部屋に響き渡り始めたからだ。
続いて……
「――マーブル、いる?」
と、その姿を見せない内に、まるで風鈴が鳴るような……高く澄んだ声が二階から響き渡って来た。
見上げればカウンターのすぐ傍に階段があり、二階へと続いていた。声の主が居る階段の先は死角となって見えなかったものの、一階の全ての空間はくつろいだり食事をするフロアのようだから、恐らく二階の先が宿泊部屋なのだろう。
「あれ、わたし達以外にもお客さんが?」
「ええ。一人、常連さんがね」
アスナの問いに彼女は頷いた。その表情はいつもの笑みに戻っている。
「あっ、さっきのマーブルって言うのは、私の名前ね。……丁度いいわ! 遅れたけど、今から降りてくる子と一緒に自己紹介するわね」
女店主はぽむ、と両手を合わせると、笑顔でそう提案した。
尚もゆっくりとした定期的なリズムで階段の木の床を叩く音が続き、俺達はその姿が降りてくるのと待った。
そして……やがて現れたその姿に、俺達は息を呑み、驚いた。
「………あっ!」
リズベットが指を差しながら声を上げたのも無理は無い。
降りてきたのは……全身ボロ布の衣服で包んだ、素顔すら謎の、第三の容疑者だったのだ。
「…………!!」
驚いたのはあちらも一緒だったようだ。すぐにターンして階段を駆け上がる。……が、その首根っこを女店主がひっ捕らえた。
「ッ!?」
「ちょっと待ちなさい」
「…………ッ!」
フードをふるふる左右に振り、激しく否定の意を示す。
「一体どうしたの、なんで逃げるのよ。しかも突然黙って……あっ、あなたまさか!」
もがき逃れようとする小さな体を、彼女
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