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カールして縁取られており、細目特有の怖さは微塵も感じられない。絶妙な角度で笑みを保ち続ける瑞々しい唇は成人女性特有の色気を帯び、くすみ一つ無い健康的な肌は化粧っ気が皆無で、自然なままの魅力を前押ししている風体だ。
頭には濃緑の三角巾を被り、肩甲骨まで伸びる艶のある黒髪を後ろで一つに結っていて、そのままウェーブの残したポニーテールを垂らしている。体付きはスリムで非常にメリハリがあり、現実世界のジーンズに近い、藍に染めた、足の引き締まったラインがハッキリと出るパンツが良く似合っている。また、その上に黒のシンプルなシャツに亜麻色のエプロンを重ねて羽織っている。
歳は俺達より上の二十代半ばだろうか……若い外見の割りに大人びた雰囲気を持つ、妙齢の美人だ。
「……私の声、小さいのかしら」
眉が八の字に顰められ、腕を組み、頬に人差し指を指し当てながら顔を傾げられる。まさしく年上なお姉さんのリアクション。
「あっ、いえっ……よ、四人です! あと使い魔が一匹!」
「あらあら」
たちまち最初の二割増のニッコリ顔になり、頬杖の姿勢に戻る。
「新しいお客さんなんて久しぶり。それに団体さんだし、もっと珍しいわ」
「そうなんですか?」
「ええ、こんな寂れた所だもの。しかも、あなた以外は女の子のハーレム御一行様なんて、創業以来初ね。……部屋は一つの方がいい?」
「んなっ!?」
「「「違いますっ!!」」」
後ろの女性三人衆が、顔を真っ赤にして同時に声を荒げた。
「あらあらあら」
再び頬に指先を当て、美貌の女店主はころころと上品に笑いこける。
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「ごめんなさいね。こんな風にお話するの、本当に久しぶりで……。楽しくて、つい口が過ぎちゃったみたい」
「へ、部屋は別々でお願いします。……あの、突然失礼な事を聞くようで申し訳無いんですが……」
「――なにかしら」
と、この人の笑顔が一瞬で切り替わり……目だけ笑っていないそれになったような気がするのは……気のせいだろうか。
「ええっと、少し前にここに背の高い男が来ませんでしたか? 俺達、その人の話を聞いてここへ来てみたんですが」
言った途端、彼女はフッと肩の力を抜き、溜息をつきながら目の威圧感が元に戻った。
「ああ、その話ね。……よかったー、またナンパされるのかと思っちゃった」
「は? な、ナンパ?」
「うん、ナンパ」
俺が聞き返すと、コクリと真顔の頷きが返ってくる。
「なんかその人がね、ここに入ってきた途端に私の手を握ってきて矢継ぎ早に求婚してきたのよ。プロポーズの結婚申請ウィンドウまで突き出されちゃって、それは驚いて……気付いたらブッ飛ばしちゃってた
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