暁 〜小説投稿サイト〜
『八神はやて』は舞い降りた
第3章 聖剣の影で蠢くもの
第27話 必殺料理人
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
なまでに感情を排して指示を飛ばす。
 感情を取り戻したヴォルケンリッターの中で、一番変わったのは私だろう。
 なにせ、はやてちゃんに会うまでは、笑みを浮かべることすらなかったのだから。
 そのことを話すと、はやてちゃんには、信じられない、といわれる。


 たしかに、自分でも変わったと思う。
 こうして、平和な昼下がりで買い物をする。
 よく笑い、悲しければ涙することもある。
 いままでの私では考えられなかったことだ。


 ――私が好きなものは八神はやてだ。


 帰るべき場所がある。その素晴らしさを知らなかった。
 それを教えてくれたのは、はやてちゃん。
 最初にもった感情は戸惑いだった。
 10歳を超えない幼い少女が主だったこともあるが、その少女が、突如現れた魔王とやらに、毅然とした態度で接していた。
 しかも、ここが異世界だともいわれた。
 思い出すのは原初の言葉。


『ボクと、家族になってくれませんか?』


 緊張した面持ちで、はやてちゃんは問いかけてきた。
 戸惑いつつも了承した。
 あれよあれよという間に、家族として暮らしてくことになった。
 彼女のもつ「原作知識」とやらのお蔭で、『夜天の書』が改造され『闇の書』になっていたことを知った。
 蒐集(しゅうしゅう)して得られる大いなる力とやらは、自滅に過ぎないこと。
 なぜか、復元された『夜天の書』になっていること。
 このあたりの詳しい説明は、管制人格――はやてちゃんによって、「リインフォース」と名付けられた――もしてくれた。


 いままで、私たちヴォルケンリッターの意義は、主を守り、魔力を蒐集し、大いなる力を得ること、だと思っていた。
 それを否定されたのだから、戸惑って当然だっただろう。
 最初は、蒐集もせず、争いのない平和な日々に慣れなかった。
 だが、時間が経つにつれ、戸惑いは感謝に変わっていった。
 見ること聞くこと全てが新鮮で、摩耗していた感情を、再び取り戻していくのを感じた。


 ――私は今の生活が大好きだった。


 ときどき、幸せすぎて不安になることがある。
 とくに、原作関連が始まってから、不安が大きい。
 本当なら原作に関わらない方がよいのだが、住み慣れた家を離れることを、はやてちゃんが嫌がった。
たとえ、父が殺された場所であっても、はやてちゃんにとって、この家こそが帰るべき場所なのだろう。
 もちろん、魔王の庇護下にあった方が安全だろう、という打算もあるが。


 レジで会計を済ませ、帰路につこうとしたとき。
 リインフォースから念話があった。
 はやてちゃんの様子がおかしいらしい。波乱の予感がした。


(ねえねえ、リインフォース。私の料理では
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ