第3章 聖剣の影で蠢くもの
第27話 必殺料理人
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なまでに感情を排して指示を飛ばす。
感情を取り戻したヴォルケンリッターの中で、一番変わったのは私だろう。
なにせ、はやてちゃんに会うまでは、笑みを浮かべることすらなかったのだから。
そのことを話すと、はやてちゃんには、信じられない、といわれる。
たしかに、自分でも変わったと思う。
こうして、平和な昼下がりで買い物をする。
よく笑い、悲しければ涙することもある。
いままでの私では考えられなかったことだ。
――私が好きなものは八神はやてだ。
帰るべき場所がある。その素晴らしさを知らなかった。
それを教えてくれたのは、はやてちゃん。
最初にもった感情は戸惑いだった。
10歳を超えない幼い少女が主だったこともあるが、その少女が、突如現れた魔王とやらに、毅然とした態度で接していた。
しかも、ここが異世界だともいわれた。
思い出すのは原初の言葉。
『ボクと、家族になってくれませんか?』
緊張した面持ちで、はやてちゃんは問いかけてきた。
戸惑いつつも了承した。
あれよあれよという間に、家族として暮らしてくことになった。
彼女のもつ「原作知識」とやらのお蔭で、『夜天の書』が改造され『闇の書』になっていたことを知った。
蒐集して得られる大いなる力とやらは、自滅に過ぎないこと。
なぜか、復元された『夜天の書』になっていること。
このあたりの詳しい説明は、管制人格――はやてちゃんによって、「リインフォース」と名付けられた――もしてくれた。
いままで、私たちヴォルケンリッターの意義は、主を守り、魔力を蒐集し、大いなる力を得ること、だと思っていた。
それを否定されたのだから、戸惑って当然だっただろう。
最初は、蒐集もせず、争いのない平和な日々に慣れなかった。
だが、時間が経つにつれ、戸惑いは感謝に変わっていった。
見ること聞くこと全てが新鮮で、摩耗していた感情を、再び取り戻していくのを感じた。
――私は今の生活が大好きだった。
ときどき、幸せすぎて不安になることがある。
とくに、原作関連が始まってから、不安が大きい。
本当なら原作に関わらない方がよいのだが、住み慣れた家を離れることを、はやてちゃんが嫌がった。
たとえ、父が殺された場所であっても、はやてちゃんにとって、この家こそが帰るべき場所なのだろう。
もちろん、魔王の庇護下にあった方が安全だろう、という打算もあるが。
レジで会計を済ませ、帰路につこうとしたとき。
リインフォースから念話があった。
はやてちゃんの様子がおかしいらしい。波乱の予感がした。
(ねえねえ、リインフォース。私の料理では
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