暁 〜小説投稿サイト〜
『八神はやて』は舞い降りた
第3章 聖剣の影で蠢くもの
第27話 必殺料理人
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
はある。
 もう間もなく家族全員が集合することだろう。


「マスターの身にいったい何があったのですか。二階で何かしていたようですが。あのような状態にまで、マスターを追い詰めるほどの何かがあったのでしょうか」


 あれこれとつぶやきながら、考えても、何も思い当たらない。
 この家は、はやてと初めてあったときから、ずっと住み続けてきたのだ。
 いまさら何があるというのだろうか。秘密などどこにも――あった。


(――もしかして、あそこだろうか。マスターの両親が殺された寝室なら、あるいは……)


 はぐれ悪魔が押し入ったあの日――そして、夜天の書の騎士たちが、主と出会った日。
 父とともに、はやては、寝室のベッドで寝ていた。
 事件の後始末がひと段落ついたあとになっても、彼女は、寝室を使おうとしなかった。
 使おうとしないにも関わらず、彼女は毎日のように、忘れずに掃除をしている。
 たとえ、家族でも、決して入ることを許さない。
 今に至るまで、リインフォースたちは一度も入室したことはなかった。
 当然、部屋の中の様子を知る由もない。


(たしかあの部屋は、正確には寝室も兼ねた書斎だったはず。だとすれば、過去に関することで、何かをみつけたと考えるべきだろうな)


 ただし、一度も入室したことがないというのは、語弊がある。
 主の危機に反応して、はぐれ悪魔から守ったときから、後片付けをするまで。
 その間は、彼女たちも寝室に出入りしていた。
 あのころ、無言のまま、部屋の中でたたずむ主の姿をよく見かけていた。
 ふと思い出すのは――父の遺体を前に、嗚咽していた少女の姿。
 忘れることのない最初の出会い。原初の風景。主の大切な人を守れなかった罪の証。
 いかに断片的とはいえ前世の記憶とやらを持ちえたとしても、9歳を迎えたばかりの少女には、あまりにも酷な試練。


(そうだった。あのときもマスターは顔を蒼白にしながらも、気丈に振る舞っていた)


 虫食いだらけの前世の記憶。転生。魂の性別。異世界。復元された夜天の書。原作知識。膨大な魔力。原作と異なる水色の魔力光。悪魔に対する異常な敵愾心。


 「八神はやて」にまつわる謎は多い。
 これまでに明らかになった断片的なキーワードを、結び付ける何かが存在するはずだ。
 その何かを見つけたのではないだろうか。
 以前から感じていた胸騒ぎが、止まらない。
 きっと、この先には、試練が待っている。理由はないが、確信がある。


(マスターがどのような存在で、どのような道を選ぼうとも、私だけは――私たちだけは、付き従います。たとえ、その先に破滅しかなかったとしても)


 本当なら諌めるべきだろう。だが、彼女は自らの主の
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ