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打球は快音響かせて
高校一年
第五話 差とも呼べない、隔絶。
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スタンドに集合した部員に伝える。自分らの次の試合が商学館という事もあって、全員そのまま球場に残って観戦するという運びになった。乙黒は部員に伝えるやいなや、自分自身もメモ帳とペンを持って、グランドに視線を釘付けにした。

「おい、宮園」

スタンドで宮園にこっそり声をかけてきたのは、真っ白な練習着を着込んだ少年だった。顔はさっぱりとした塩系で、どうにも感情の起伏に乏しそうな、淡白な顔をしている。

「お、元次郎か」
「お前、三龍に行ったとか。商学館から誘いも来てたのに。」
「俺にも色々あるんだよ、お前には分からない事情って奴が」

宮園はバツの悪い顔を見せ、相手の少年は全くの無表情で「事情、ね」と短く繰り返した。

「まぁ、また対戦できたら良えな。練習試合にでも来てくれ。じゃあな。」

そう言い残して、応援席に戻っていったその少年の背中には大きく「梶井」と書かれていた。

(宮園、商学館にも知り合い居るんだな。当たり前か、硬式上がりだし。)

翼は宮園の隣で一連のやり取りを見ていたが、宮園が男同士の会話で、気持ちが引いているように見えたのは初めてのような気がした。

「こういうのを見たら、ウチの立ち位置というのを実感するなぁ」

今度は少年と入れ替わりに、宮園の側に浅海がやってきた。少し呆れたような、諦めたような笑いを見せていた。

「商学館の誘いもあったのに、何故三龍なのか?どうして一流の強豪を蹴って二流に行くのかって事だな。そして、練習試合に“来い”というのは、こちらからはやってやる気はないという事だ。今の三龍の立ち位置を示す、端的な会話だったよ。まぁ、普段偉そうな宮園が負い目感じてビビってる姿を見れたのは面白かったけどねぇ。」
「……ホント良く見てますね」

宮園はブスッとして、そっぽを向いた。
浅海はいたずらっぽく、ふふんと笑った。

「そういう、生徒達が自分達をどう思ってるかという所は、試合以上に見ていて興味深いよ。高校生なんて気持ちの持ちよう一つでいくらでも変わる。強豪校が強いのは、人材が良いのもあるが、むしろそこだな。強豪のブランドに、生徒自身も守られ、自信をつける。ウチにはない強みだなぁ、こればっかりは」

浅海はため息をつき、不機嫌な顔を見せる宮園からグランド上へ視線を戻した。

「この試合に関しては、見るべきはこいつだな。徳実グリーンズから来て、この春いきなり投げている。ボーイズ国家代表メンバー、浦田遼。」

商学館の先発マウンドには、背番号10の右腕が上がっていた。長身かつ、しなやかな細身。堂々と落ち着いた投球で、上級生の打者を手玉にとっていく。

(俺が毎日走って球拾ってってしてる間に、こんな風に試合で投げてる奴も居るんだよなぁ)

翼は、躍動する商学館・浦
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