暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
狂気の始まり
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ガー)スキル中級突進技《ラピットバイト》をがら空きの胴にぶち当てる。

巨人はいきなりの攻撃に怯んだ。その隙に、レンの本領が発揮された。

スバン!

小さな音とともにレンの姿がかき消える。それと同時に巨人の四、五メートルはある体に幾つもの傷がつく。

これがレンの長所であり弱点でもある、極振りされた敏捷値(AGI)だ。

普通、SAOプレイヤー達は多少ばらつきはあっても、基本的にバランスよく振る。

何故ならば、SAO内では敏捷値が低すぎると、戦闘での回避が難しくなり、逆に筋力値(STR)が低すぎると、戦闘での弾き(パリィ)が難しくなり、なおかつ与えるダメージ数が少なくなってしまう。

そのため、なかなか一極型プレイヤーは少ない。

だが、レンの場合、高められた敏捷値で敵にパリィする余裕を与えず、さらに周囲のオブジェクトを足場にし、攻撃に連続性を持たせることで与えるダメージ数を限りなく強化しているのだ。

すでに、巨人の体には、数百もの傷がついている。

さらに、《鼠》が警告していた雷系ブレスも、上体を反らし、腹をこれでもかというぐらいに膨らませるという少々大袈裟なモーションのせいで簡単に避けられる。

──いける。

そうレンが思った時

肩の上に乗ったクロが、鋭く鳴いた。

直後──

視界が真っ白に染まった。

ピシャアァァン! という乾いた衝撃音は、まさしく雷鳴。

……な…んで…………

ぼんやりとレンが思った時に、ようやく光でよく見えなかったボスの全身が見えてきた。

「……な………」

巨人はもう一方の顔でブレスを放っていた。

事実、ボスの醜くカリチュアライズされた二つの顔の、ぞろりと牙の生えた口からは、両方とも煙を吐いている。

それをレンがようやく認識したのと同時にレンのHPバーが三割近く減った。直後、バーの下に緑色の枠が点滅し、同色のデバフアイコンが表示された。

いきなり全身の体感覚が遠ざかる。着地体勢を取りたくとも、足が動かない。背中が固い床に叩きつけられる。

ただの転倒(タンブル)ではない。 これは──

「……《麻痺(パラライズ)》…………」

咄嗟に周りを見ると、二連のブレスは直結(レイド)パーティー、四十八人の過半数を動けなくしたのか、大半は地面に縫い付けられているように動かない。

そこまで見ながら、レンは反応の鈍い右手を懸命に動かす。右腰に装着されたポーチには、HP回復用クリスタルが二つ、そして解毒用の緑ポーションが一つ準備してある。なんで、ポーションをクリスタルにしなかったんだと、後悔しながら、緑のほうを手探りで引っ張りだし、栓を抜く。

ミント風味の液体が喉を通る間にも、重々しい足音が徐々に接近して
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