第一部 vs.まもの!
第11話 なっとくできない!
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きでそうなったわけじゃねえのにな。奴らを扱き使う側にも、不老不死への嫉妬があったんだろう。今の内に話しておくから、自分の身の為によく聞いておけ。かいつまんで話すと、その後ファトゥムは姉のナーダと共にアスロイトの王都ガスニッツに運ばれた。不死者の標本としてな。そこでの扱いが原因で、ナーダは感情を失くし、一切動けなくなった。治る見込みは全くない」
ウェルドは胸がむかむかするのを感じ、眉を顰めた。
「奴は怒りと絶望の塊だ。いいか、俺はお前らの安全の為に、こんな話をしてるんだ。奴に関わるな。他人がどうこう出来る問題じゃないんだ。さっきの男と同じ愚を犯すんじゃねえぞ」
「そんなの納得できない!」
アーサーが声を荒らげた。
「過去に何があったとしても、人を殺めるなんて許される事じゃない! 僕には許せない!」
「馬鹿野郎!」
オイゲンが怒鳴り、アーサーは身を竦める。
「何も知らねえ貴族のお坊ちゃまが偉そうな口ききやがって! お前に奴の苦しみの何がわかる!? 正義の味方気取りも大概にしやがれ!」
アーサーが顔を赤らめる。彼は唇を結び、屈辱に身を震わせていたが、無言のまま背中を向けて、酒場を出て行った。ドアの外は夕刻であった。
「あ、待って! アーサーさん!」
サラが追いかける。オルフェウスも肩を竦め、ゆっくりした足取りで出て行った。酒場にはオイゲンとウェルド、ノエルとディアスが残った。静けさが葡萄酒のように満ちてきて、天井に揺らめいた。
「……知りたい事は知っただろ?」
ウェルドはうんざりして頷く。
「ああ、わかった。俺達も邪魔するぜ」
「悪かったな。片づけ手伝わせちまってよ」
「別に?」
同行者を顧ると、ノエルは腕で自分の体を抱き、震えていた。顔色が悪い。
「大丈夫か?」
「別に――心配されなくたって――」
「ノエル、無理はするな」
腕組みをしてオイゲンが言う。
「初めてなんだろ、人が目の前で殺されるなんて。ショックを受けて当然だ。強がるなよ」
ノエルは唇をぎゅっと結んでいるが、目尻に涙が浮かんだ。ウェルドはオイゲンに頷き、ノエルの肩を叩く。
「宿舎に戻ろうぜ。今日はもう休もう」
「ううん……あたし、クムラン先生の所に行く……」
「行ったって、今日はもう身が入らねえだろ」
「お願い!」
ノエルは叫んだ。
「……一人になりたくないの」
ウェルドは何も言えず、居たたまれない気持ちでノエルに頷く。三人は酒場を出た。
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