第一部 vs.まもの!
第11話 なっとくできない!
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……」
「僕とあなたの仲ではないですか! この町に着いた初めの日、総督府で手続きの終了を待つ間、愛を囁いた仲ではないですか!」
「初日から口説いてやがったのか……」
「あなたが信じてくださらないのなら、僕はもう……」
オルフェウスがするりと腰帯を解き、首にかけるので、サラは慌てた。
「やめてください! 信じます!」
いきなり喧噪がやんだ。
酒場に静けさが漲る。
サラが、オルフェウスが、アーサーが、酒場の出入り口を見た。
テーブル席の冒険者達も皆、夏の日差しが入ってくる方向を見ている。
ウェルドも、見た。
戸口に少年が立っていた。
これは『少年』ではない。ウェルドは直観する。それほど異様な空気を纏っていた。
肩にかかる濃い紫の髪。その下の白い顔。目は、老人のように疲れており、枯れていた。
「チッ! 外しちまった」
沈黙の中、泥酔している男が言う。少年の傍らには、割れたグラスが転がっていた。連れの男が慌てふためく。
「あ、謝れ、早く――」
「ああっ!? 何で俺があんなガキに謝らなきゃならねんだよ!」
「馬鹿野郎! 相手が誰だかわかってんのかよ!」
少年は無視する。枯れた目はウェルドを通り抜け、カウンター奥のオイゲンに向いた。
「バルデスは来ていないか?」
泥酔者はなお声を張り上げる。
「無視すんじゃねえ、この化け物野郎!」
「やめろって、お前――謝れよ!」
「ケッ! 何で人間様が化け物に謝らなきゃならねえんだ? えっ!? 目障りなんだよ! 帰って寝てな、てめえの姉貴みたいによ!」
少年が貫頭衣の帯から杖を抜いた。
光が迸る。
テーブル席の冒険者たちが悲鳴を上げ、伏せた。とりわけ鋭い悲鳴を上げたのは、泥酔した男だった。足を押さえ、のたうちまわっている。
「足が――足が――!」
「すぐ楽にしてやる」
少年は感情のない声で呟く。
「やめろ!」
オイゲンがカウンターに手をつき、厨房側からホール側へと飛び出した。遅かった。少年の杖から殺気が迸る。光が弾け、男の悲鳴がやんだ。
少年は出て行った。
※
「アオゥル族の名は聞いた事があるだろ?」
すっかり片付き、他に客のいなくなった酒場でオイゲンは話す。ウェルドが答えた。
「四十年前に『アザレの石』を発見したせいで、不老不死の体になった一族だな。十四、五人いたんだっけ?」
「数は俺も忘れたが、その中で一番若かったのが今のあいつ……ファトゥムだ」
「不老不死になってからの彼らの境遇は悲惨だったと聞くわ」
青ざめ、身を固くしたままノエルが言う。
「悲惨な環境での過酷な労働、食事もなく、睡眠もなく、徹底的に働かされて、そして、忘れられた……」
「ああ。奴らは不死の体を手に入れた事を悔やんだ。好
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