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打球は快音響かせて
高校一年
第4話 情けは誰の為?
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お前なぁ、優しい事は良いことだが、その優しさは本当に正しいのか、よく考えてみな?飾磨は強くは無いものの一応硬式クラブの4番打者で、こと野球にかけてはお前よりも数段上手い。唯一走るのだけが駄目だ。お前は今の所逆だろう。お前は自分の唯一の強みと、飾磨の唯一の弱みを比較して、そして哀れんだんだ。どうだ?滑稽に思わんか?」
「…………」

翼は何も言えない。

「それに、お前、遅いヤツに合わせて一緒に走ってあげようなんて、弱いヤツが可哀想だからみんなで弱くなってあげようなんて言う最近の悪しき教育と同じじゃないか。それでは社会から向上の可能性は失われる…人間、退化する一方だな。当然、チームは強くならない」
「じゃ、じゃあどうしたら良いんですか?」

言われ放題の翼は、縋るように尋ねた。
浅海はふふん、と不敵な笑みを見せた。

「それは言えないねぇ。私も正解なんて持ってるわけじゃない。教師の仕事はお前らに“分からない”を与える事だ。お前なりにこの3年間で、そのわからない事に決着をつけるんだな」

浅海はホースを片付ける。
突き放された翼は、その背中を見ながら突っ立っていた。

「ありがとう。助かったよ。明日の予習でもして、早く寝るんだな」

そう言い残して浅海は去る。
水を与えられた花が、湿ったその花びらを電灯に光らせていた。

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