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打球は快音響かせて
高校一年
第4話 情けは誰の為?
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放課後は部活。三龍野球部の部員は60名。一年生は17名だ。翼、宮園、鷹合、渡辺、美濃部以外は全員自宅通いの選手達。宮園は水面地区ながらあえて寮生活をしているので、13人は地元出身の選手という事になる。交通網が発達した大都市圏・水面地区なので、地元と言っても様々なのだが。

「さぁ体幹、体幹だ。あとその腹筋5セットやったら、次はランメニューだぞ〜。」
「」

翼を始めとした1年は浅海の言葉にゲンナリする。翼ら1年のうちで、いきなり上級生に混じって練習しているのは鷹合1人。鷹合は中学時代の実績や、現段階での身体的資質からしてもズバ抜けている。期待されて入部した特待生である。その他の1年生は、10人が球拾いなどの練習サポートを主にして、たまに軽く練習に参加し、そして5〜6人が日替わりで浅海に基礎体力をシゴかれる。今日は翼は、基礎トレーニングの順番だった。

「13、14、15、16」
(ヤバい!)

浅海が課す体幹メニューは、腹筋だけをとっても、様々な種類の腹筋を織り交ぜた1セット60回を7回、これだけでもかなりしんどいものだった。もちろん、他に背筋もあるし、静止系のメニューもある。これには翼は参った。初めてやった次の日は、マトモに笑う事もできなかった。

しかし、翼にとって幸運だったのは、走る事、特に持久走にはそこそこ耐性があった事である。泳ぐのが趣味なだけあって息切れはあまりしないし、体力がない訳ではない。自分以外の「経験者」達とも、そこだけは引けをとらなかった。

「ハァッハァッ」ドタドタ

体幹メニューの後のランメニューで、今日は1人が遅れをとっていた。冨士原シニア出身の内野手、飾磨勇作だった。見た目はかなりポッチャリとしていて、顔もまん丸、実にのんびりした少年だが、しかしランメニューにおいてはのんびりしている事など許されないのだ。とっとと走るべきなのだ。

校内一周、600mを何セットも走るレベテーションを課されていたが、飾磨は一度も設定タイム以内に入らなかった。さすがに、浅海も顔をしかめ始める。

「おいおい飾磨ァ、君は少し体がナマり過ぎてるようだなぁ。もう少し絞らないとなぁ」
「ふぁっ…ふぁい」
「ラストはタイムに入れよ?入らなかったら、もう一本おかわりだ。おかわりすきだろ?いいな?」
「……ふぁい………」

飾磨はかなりグロッキーだ。
浅海は、その姿を見て妥協する事がない。

「3、2、1、スタート」

ラスト一本がスタートする。
走り出した1年の背中を見送って、浅海は一息つく。しばらく経って、速い者から順にスタート地点に帰ってくる。浅海は気づいた。翼がこのラスト一本だけ、明らかに遅い。

もうしばらく待つと、ドタドタとのろま
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