麒麟と鳳凰、仁君と伏竜
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う。でも、国を治める王として、劉備軍の兵という自国の民の多くを守れるから、今の桃香様はそれを呑みこんでくれる。
私は桃香様に言葉を紡ごうとした。だけど……出来なかった。
長い静寂が訪れる。思い出したように桃香様がお茶を飲む音だけが天幕に響いていた。
そんな折、一人の兵が足早に私達の元に駆けてきた。
「りゅ、劉備様。公孫賛様が到着なされました!」
「ええっ!? なんで白蓮ちゃんがここに!?」
為された報告に疑問が浮かぶ。
本城に何かあったのか、雛里ちゃんが何か考えたのか、それとも……秋斗さんに支えて貰ったから星さんのように早く戦に出たくなったのか。
「直ぐお連れしてください」
一つ言うと兵は全速力で駆けて行った。その背を見送り、桃香様が私に首を傾げて問いかける。
「何かあったのかな?」
「分かりません。雛里ちゃんと秋斗さんがいるので何か考えての事だと思うのですが……」
思考を巡らせていろいろと考えていると、白蓮さんが天幕に到着した。
「久しぶり、と言ってもちょっとだけどな」
城を出る時につけていた髪留めでは無く、幽州での姿で現れた白蓮さんは雰囲気が変わっていた。否、戻っていた。それは洛陽で最後に見たモノ。
張りつめていた感じは無くなり、穏やかで優しい……これこそが白蓮さんだと言えるような人に。
「白蓮ちゃんちょっと変わった?」
「さすがに分かるか? ちょっといろいろあってな。秋斗に怒られたんだ。私は私のままでいいって。焦ってたんだ、きっと」
やっぱり彼は凄い。桃香様でさえ見抜けなかった事を容易く見抜いて変えた。
緩い雰囲気が天幕を包み始めたが、今はそれよりも……大事な事を聞かないと。
「白蓮さん、本城で何かありましたか? いえ、雛里ちゃんからどのような指示が……」
「いや、私の方が聞きたいんだけどな。桃香は袁紹軍に対してどう動くつもりなんだ?」
一瞬何を言っているのか分からなかった。
「え、袁紹さん? 私達が戦をしてるのは袁術さんだよ?」
「……バカな、伝令は……そうか、あの時と同じかっ!」
空白、後に白蓮さんが慌てだし、漸く私の思考が正常に回り出す。
「まさか……袁紹さんが攻めてきたんですか!?」
「そのまさかだ! 伝令は殺されたんだろう、私の時もそれがあったからな! くそっ、教えてなかった私の失態だ!」
「でも、袁紹さんは間違いなく曹操さんを攻めるだろうって! それにいくらなんでも速すぎるよ! 白蓮ちゃんが逃げて来てまだ半月も経ってないんだよ!?」
「来たものは来たんだ! ……っと、お茶を飲もう。落ち着かないと始まらない」
ふいに視線を魔法瓶に向けて、空いていた湯飲みにお茶を入れ始めた。
秋斗さんがいつ
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