麒麟と鳳凰、仁君と伏竜
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「その……いつから?」
「うーん……洛陽から帰って来てから結構目で追ってたよね? 雛里ちゃんみたいだったからそうなのかなーって」
聞くのが怖くて違う事を聞くと説明してくれる。私はそんなに分かり易かったのか。
苦笑した桃香様の瞳には不思議な色が見て取れた。雛里ちゃんのような甘い色では無く、少し昏い影を落としている。
「桃香様は秋斗さんをどう思っているんですか?」
堪らず聞いた。彼の事を考えているのは分かるけど、どうしてそんな色になるのか分からずに。
桃香様は一瞬驚いて、少し大きく深呼吸をして口を開く。
「私は……正直あの人が少し怖いよ。優しいのは知ってるし、人を助けたくて仕方ないのも知ってる。でも、やっぱり怖い。新しく入った兵の人達の話を聞いてから特に、ね」
心の底から来る怯えの色……だったのか。
報告にあった先の袁術軍や孫権軍との戦。確かにあれには私も恐怖した。でも……軍師としての私は歓喜していた。特に黒い獣がうるさく喚いていた。
効率的に戦を終わらせるために自分の部隊を常時死兵と為す。徐晃隊の訓練は他の部隊からしても異常なのは知っていたけれど、まさかそこまでなるとは思っていなかった。
きっと兵達は彼の為に全てを捧げている。その命すらも。
兵が軍師の思い通りに動く事は無い。それを覆したのが徐晃隊。人の命を数として扱うモノ。盤上の遊戯のような戦は……軍師達が一番望むモノなのだから。
桃香様が怯えているのは他にもある。
袁術軍の捕虜をそのまま戦に駆り立てて軍に取り込んだ事。
鈴々ちゃんは、
『降ってくれた皆は鈴々達の為に戦ってくれるって。お兄ちゃんはやっぱり凄いのだ』
なんて言っていたけどそれはおかしい。
降って直ぐ、それも当日に所属していた軍を攻撃させるなんて正気の沙汰では無い。だが、鈴々ちゃんの発言は的を得ているので責める事は出来ない。
言うならば兵に対する離間計。特殊な武将である彼しかそんな事は出来はしないだろう。
ぶるりと身体が震えあがる。占める感情は歓喜と畏怖。
あの人がこの軍に所属しているだけでどれほど安心感があるのか。桃香様には彼の事を認めて貰わないとダメだ。怖くても、やっている事は間違いなく私達の軍の為になる事しかないのだから。
「ですが秋斗さんの使った策は有用です。袁術軍は無理やり徴兵されたモノも多いので、私達の元で戦いたいと思ってくれたんだと思います」
初めのそれが彼への恐怖であっても、とは言わない。今はもう、心の底から私達の元で戦いたいと言ってくれているのだから。
「……間違ってるなんて言わないよ。たださ、やっぱり哀しい。ちょっと前まで味方だった人を殺させるなんてさ」
前までの桃香様ならきっと否定してただろ
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