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乱世の確率事象改変
麒麟と鳳凰、仁君と伏竜
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んの部隊に奇襲を仕掛けて貰い、どうにか攪乱する事が出来るだろうと考えていた時の事。

「はふぅ」
「お疲れ様、朱里ちゃん。お茶をどうぞ」

 陣内にて報告を待ち、これからの展開を考えていると、桃香様が天幕に来てくれて暖かいお茶を差し出してくれた。

「ありがとうございます。あ、魔法瓶も持ってきていたんですか」

 秋斗さんが愛用している温度をある程度保つ容器。どこでも暖かいお茶が飲めるので私達の軍でも結構重宝している。

「うん♪ これ凄いよねー。秋斗さんって何個か不思議なモノを作ってるけど、便利なのばっかりで助かるよー」

 実は、私と雛里ちゃんは軍用になる絡繰りを聞いていたりもする。
 攻城戦を安易にする巨大な杭を撃ち出すモノ、大きな石を遠くまで飛ばすモノ、煙を発生させる草を詰めた球、暗闇を一瞬だけ眩く照らす球、高く大きな音を鳴らす矢、他にも幾つか。
 技術者がいないので未だ制作には取り掛かっていないが、これらは後々大きな戦力となる事が予想された。
 ただ、強い兵器は他国に技術が盗まれるとそのまま転用されてしまいこちらも危うくなるので使い処が難しい。ここ一番の戦でのみ使うべきだろう。
 大陸の戦の常識を覆すモノも知っているがそれだけは教えないとも言っていた。来るべき治世の継続の為に残しておくとも。
 確かに行き過ぎた兵器は人を余計に滅ぼし乱世を伸ばす。大きすぎる力は、それがあったから勝てたのだと周りに思わせ、誰もがそれを手に入れたら勝てると希望を持ってしまう。欲の張った者がそれを手に入れたらと思うとぞっとする。
 彼の知識は乱世でも、平穏な治世でも大きすぎる。
 例えば……学校というモノ。治世になれば一番作りたいモノらしく、その制度は素晴らしいモノだった。幼いころから識字率を引き上げ、思考能力を着け、民の誰しもに機会を与えるモノ。
 末端に余計な知恵を与えると反乱を誘発するが、それを抑え切れる秩序を作り出せば可能だろう。
 考えて……私に学校の話と共に言ってくれた言葉を思い出す。

『朱里がいたら作り出す事が出来るさ。人生全てを賭けてこの大陸に悠久の平穏を。次の子供達や孫達が理不尽な目に合わず、笑って暮らせる優しい世界をな』

 ドクンと胸が跳ねて頬が熱くなった。

――ああ、こんな乱世早く終わらせて世の中を良くしたい。出来るなら、一生彼の隣で。

「あ、朱里ちゃん。秋斗さんの事考えてるでしょー?」
「はわわっ」

 ふいに桃香様から掛けられた一言に思考が止まる。
 楽しそうに笑う桃香様は美しく、されどもいつものようにふんわりとしていた。

「ふふ、秋斗さんって優しいもんね。好きになっちゃうのも分かるなぁ」

 言いながら、桃香様は遠い目をした。桃香様は……どうなんだろうか。

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