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乱世の確率事象改変
麒麟と鳳凰、仁君と伏竜
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は雛里。俯いて言葉を紡いだ白蓮を茫然と見ている秋斗に少し目を向けてから、

「……弱ってしまった漢を復興して、ですか」

 向かっている思考のずれは、今ならば修正が効くのだと信じて返した。
 はっきりとした天下統一という形では無く、現状の漢のままで全てをうやむやにする事は出来る。三国が成り立とうとも帝の名の元に抑え込み、桃香や朱里が中央の権力を得て領地の区別なくそれぞれ治める太守を変える等を行って済ませられれば。
 盤上の遊戯のように領地を取り合うでは無く、漢という虫の息で生命を維持している大国の元に、今の帝の元で、皆が協力しあって平和な世界を作る事が出来る……ある意味で三国同盟、ある意味で天下統一と言える。
 秋斗にとって一番なって欲しくない未来であり、桃香と白蓮の望みをそのまま叶える事の出来る未来。
 噛み合わない歯車は軋みを上げる。目指すモノのズレは既に取り返しがつかない程に大きかった。
 秋斗も雛里も月も詠も、既に漢を見限っており、壊してから作る事が目指す世界であると信じている。
 しかし白蓮は、否、桃香も朱里も愛紗も鈴々も星も……目の前に吊るされた平和の継続をこそ、彼女達の優しい善性から信じている。
 秋斗達にとってことさら問題だったのは桃香が劉備である、という事だった。劉姓は漢の希望。なら、それが大きな力を持てばどうなるか。それがずっと、秋斗と雛里、二人の思考から抜けていた。己が描く世界を優先するあまりに。雛里は秋斗が言う天下統一を目指してしまったが為に。秋斗は桃香が無理な場合を考えていたが為に。
 秋斗の描く道筋も、白蓮や桃香が選ぶであろう道筋も、どちらも同じように先の世に平穏を作る事が出来るが、従えると協力するでは後々に天と地程も差が出てくる。未来の事は誰にも分からないのはその通り。やり方が違うだけであり、どちらが最善であるのかは治めてみなければ分からないのも正しい。ただ一つ、人間の辿ってきた歴史をこの世界の誰よりも知る秋斗がいなければ。
 雛里の否定的に取れる言葉に若干首を傾げ、白蓮は顔を上げた。

「だってそれを目指して戦ってるんだろ?」

 鳳雛とまで呼ばれる天才少女は、異質な価値観を持つ秋斗の思考を今までずっと吸収してきた。だから、現在の白蓮が描く未来に否定的。
 どちらも最終的に理不尽の無い同じ世界を目指していると分かっていても、それでは足りないのだと、雛里が返そうとする前に、ガチャリと金属音が秋斗の方から響いて二人ともが視線を向けた。

「すまない、最近鞘を付ける紐が緩くてな」

 わざと落とした……と気付き、雛里は秋斗の思惑を理解して平常心に落ち着いていった。戦前の不和や対立は必要ない、論議をするのなら桃香と一緒でなければ意味が無いのだと言い聞かせて。

「うん、漢が復興されれば平
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