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乱世の確率事象改変
麒麟と鳳凰、仁君と伏竜
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うか、そういう事か。さすがは雛里ちゃん。確かに同盟は無理だ。巻き込んで見せよう。

「なら二番目でも徐州を離れるつもりという事でしょう」
「えっ?」

 茫然と、桃香様が呆気にとられていた。
 これは私の失態。朧げに考えていただけで、この先どうしようかという事を話していなかったのだから。
 机に置いてあった白羽扇を手に取って胸の前に掲げる。桃香様に選択を促す彼みたくなれるように。

「桃香様、徐州は戦略上手放すしかないんです。桃香様の理想を叶える為には力を付ける場所が必要、となれば……密偵と元直ちゃんからの情報にあった益州、為政者が非道な行いをしていると聞くそこを手に入れます」

 手に入れる。私はそう言った。他国にこちらの事情で押しかけると。その地を奪い取ると。
 反董卓連合の決断を思い出して、彼はこんな気持ちだったのかと理解が深まった。

「じょ、徐州の人達はどうなるの?」
「一番目と三番目の策では袁家の手に落ちるので確実に今より生活が危うくなります。二番目の選択なら……曹操さんに売り渡す形となりますがそこまで酷くは無いでしょう」
「違うよ! せっかく皆……軌道に乗り始めたのに! ここの皆を見捨てろって言うの!?」

 悲痛な叫びに心が痛む。徐州の生活水準は私達の政策で前よりも上がりつつあった。
 何を於いても民の為。桃香様には……耐えられるわけがない。
 それでも選んでもらわなくてはならない。桃香様が理想を叶える為ならば。私は何にでもなろう。

「その通りです。民を見捨て、国を見捨て、身一つで理想を作り出す為に耐え忍ぶ事」
「そ、曹操さんだって悪い人じゃないんだよ!? あの人も平和な世界を願ってる! ここを離れなくても手を繋げるよ!」

 分かってる。桃香様がそう言う事は。
 そこで白蓮さんが大きくため息をついた。

「桃香、曹操は無理だ」
「どうして白蓮ちゃんまで――」
「私は! 私達は袁紹軍から攻められる前、曹操に密盟を依頼していた。だけど断られたんだよ。これから侵略するから、という意思表示なんだよ、あれは」

 絶句。強く遮られて桃香様は言葉を失い、だらりと胸の前に上げていた両手を下げた。
 前例を示された事によってより強固に絶望を突きつけられただろう。

「なんで……皆仲良く出来ないの? 平和を望んでるなら……皆が協力すれば簡単なのに」

 震える声は今にも泣きだすかのよう。どれだけ、この優しい人に絶望を突きつけるのか。耐えきれず私は俯いた。白蓮さんも俯いていた。
 これが乱世。他を食べないと生き残れない。力を示さないと納得されない。理想を掲げようとも、力が無ければ話も聞いて貰えない。

「ねぇ、朱里ちゃん。一番被害が抑えられるのはどれなの?」

 暫らくの静寂
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