麒麟と鳳凰、仁君と伏竜
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を集めるようにと伝えて。
廊下を歩きながらも積み上げ直す思考。その中で、夕が洛陽で自身に勧誘を掛けてきた時の出来事を記憶から引っ張り出していた。
――夕め。あれは朱里と雛里に俺が勧誘の話を言う事も見越して、ここに攻め入る事は無いと思わせる為の策か。袁家二分は嘘、本当の目的は徐州攻略と……用済みの孫策を袁家総出で仕留める事くらいか。しかし幽州の掌握も終わるはずの無いこの時機で、一番恐れているはずの曹操に対してノーガードとは……ぶっ飛び過ぎだろうに。いや、あいつなら対策くらい余裕で考えていそうだ。
ただ、気になるのは勧誘をしてきた時の瞳。嘘を言っている訳でも無く、真実を向けているわけても無く、感情の綯い交ぜになっただけの瞳。救いを求めるように、か細い光が光っていた瞳。
「邪魔をするなら……潰すだけか」
ふるふると頭を振って追い遣り、彼は廊下を進む。ここからどうすればいいかの思考を積み上げながら。
彼の心に憎しみは無かった。牡丹を殺した相手だとしても、白蓮から大切なモノを奪った相手であっても、自責の念が大きすぎる為に秋斗は他人を憎めない。というよりも、数多くの人を殺し、最効率の戦場を作るために決死の化け物部隊を作り、慕ってくれている部下を切り捨て続けている秋斗には、もう憎しみという感情を他人に向ける事が出来なくなっていた。
今、湧いて出てくるのは多数の不安と疑念。
世界の流れが、大局が大きく変わった。自分が関わった事によってか、それともこれが正常な流れであるのか。答えのない迷路へと脚を踏み入れそうになる。
先が読めなくなるというのはこれほど不安なのだと、イレギュラーな事態はこれほど絶望を運んでくるのだと……思考が焦りに染まっていく。
舌打ちを一つ。
茹る頭を落ち着かせ、いつも通り数学の証明のように、自分が辿り着きたい結果へと、己に与えられた札を並べて道筋を組み立てて行く。
この世界に来てから圧倒的に長い時間をそれに費やしてきたからか、瞬時に幾つか組み上がり……過程を見て、もしかしたらと思うモノに至った後、自嘲から口元が引き裂かれた。
「クク、世界ってのに意思があるのなら俺が……いや、徐公明が劉備軍にいるのが気に食わない……そんな所か」
一人ごちて廊下を歩く。何度も何度も、淡々と思考を積み上げながら。
自分の思い通りに動けないという事に、大きなもどかしさを感じる心を抑え付けながら。
将であるが故に、桃香の部下であるが故に、桃香の成長を待っているが故に、全ての手段が限定されてしまう。首輪付きは誰であるのか。
しかしそれが有利に働く事もあるのだと自分に言い聞かせ、ギシリと拳を握りしめて歩く事幾分、彼はやっと着いた軍議室の扉を開いた。
「――というわけだ。ああ、それと火
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