暁 〜小説投稿サイト〜
函館百景
その2
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
にぬるく、ぬるぬるしていた。それでも口当たりは良く、一口食べたら止まらなくなっていた。
 30分弱で完食した。


 そしてまた、赤レンガ倉庫へ戻る。
 エスカロップの味が濃く、少しのどが渇いた。
 持ってきたCCレモンの残りを飲み干す。炭酸の抜けたCCレモンほどまずいものはないが。
 暑さで頭がぼんやりした状態で、お土産処に入った。
 お土産処で一番長い時間を費やしたのは、ガラスを売っている場所。そこには様々なグラスが置かれていた。
 鉢型のグラスが多いが、ワインを入れるのに使うつづみ型、長身の型もある。どのグラスも蛍光灯の光に反射して、七色に見える。あまりワイングラスはおいてほしくなかったが。下手に取り上げると壊れてしまう。
 『アイヌ仕様グラス』が気になった。自分の目線よりも高い棚から、一つとってみる。
 文様がシンメトリーかつ複雑。 
 アイヌ人は昔から、狩猟や採集で生計を立ててきたといわれている。大方この模様は海沿いに住み、魚を主食としてきたアイヌ人が生み出していったものなのだろう。曲線の文様がアンモナイト、さらには波を思い出す。やはりどこの文化でも、渦状、波を思わせる曲線が美しいと感じるのだろうか。
 人間の美意識は結構面白い。大体あまり変わらない。
 トポロジーは人間の美意識を追求するためにもあるのかもしれない。
 ぼやけた意識も、ようやくはっきりしてきていた。
 肩掛けがグラスにぶつからないようにしながら、グラス売り場を後にする。奥のほうにすすんでいくと、檜の部屋にスルメイカが置かれていた。
 茶色い。
 あまりこの函館という土地には似合わない気もした。昔からイカ漁が盛んであるのは分かっていたが。少なくともイカは白い身のまま刺身にして食べるに限る。
 その隣に、『イカール星人』と呼ばれるグッズのフィギュアがある。のちに札幌で見たマスコット『イラックマ』に似たご当地マスコットといった感じか。
 ぎょろ目で茶色く、黒いまだら模様がついている。
 ご当地ヒーローでは、イカはイカール星人として悪役のポジになっているようだが。戦隊ヒーローではなく、ウルトラ警備隊のような軍団の宿敵である。
 タコに比べるとイカは、人々にあまり親近感を与えていないような気がする。
 タコは日本人にとってはユーモラスで、『蛸薬師』というタコの神様も存在する。一時期「火星人はタコのようだった」という噂が流れたこともある。西洋人にとってはクモと並んで気持ち悪い生き物の代表らしく、『devilfish』の異名を持つ。ギリシャ神話でも『クラーケン』というタコの化け物がいる。
 それに比べてイカはなぜ、人々に印象を与えなかったのか。体が白いのと、割としっかりした胴体をもち、規則的に足を動かすからだったからだろうか。タコは不規則に動く。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ