第一部 学園都市篇
序章 シャングリ・ラの少年
七月十六日:『青天の霹靂』
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このくらいしか役に立たない、しょうもない屑能力ですよ。おはようございます、管理人さん」
そんな背中に掛かった、女性の声。このアパート『メゾン・ノスタルジ』の管理人。まだ二十代後半くらいの青みがかった長髪に眼鏡、落ち着いた藤色の着物姿の、竹箒の似合う女性が微笑んでいた。
「あ、家賃は昨日の夕方に振り込みました。今日の扱いになるみたいですけど」
「嚆矢くんだから心配してないわ、滞納無しの優良店子さんだもの」
「買い被りすぎですよ、撫子さん」
そう言って、淑やかに笑う。いかにも大和撫子といった風情だ。何せ、名前が『大和撫子』なのだから。
「じゃあ、行きます」
「ええ。気を付けて行ってらっしゃい」
背中を見送られながら、車輪をアスファルトに転がす。まず最初の角を、右に曲がる。
「今日は――――げっ、一時限目から体育かよ……やっぱ決まってる事は変えらんないもんなぁ、百分の一だぜ……」
道々そんな事をボヤきながら、暑くなり始めた路上の空気の中を走り抜ける。
夏期休業まで残り数日のその日の天候は快晴、暑くなりそうな一日だった。
………………
…………
……
朝刊を配り終えて退社し、後は学園に登校するのみ。スクーターは近くの駐輪場に預け、第七学区の学園……『常盤台学園』等と共に、『学舎の園』を形成する学園の一つ――――『二天巌流学園』を目指す。
――うん、凄い名前だってのは認める。だが、生憎あの日本史上最も有名な大剣豪二人とは縁も所縁もない学園だ。創立者が好きなだけだったって話。
唯一、縁故が有るのならば……この学園の校是は『質実剛健』に『則天去私』、『無念無想』に『文武両道』――――『能力上等』。『超能力を武術技能に応用する研究』では第一線級の学園だ。
カッターシャツの上から学ランを着込み、詰襟まで留めて準備完了。後は鞄を肩に担ぎ、学園まで続く石造りの『心臓破りの一千段』を歩き始める。エスカレーターやエレベーターの類いの稼働施設なんぞは、勿論無い。
因みにこの学園は本当に細やかな丘陵の頂点にある。この階段を作りたかったが為に。そしてこの階段を登りたくがない為に転校していく新入生は、毎年実に三割にも上るとされる。
そんなものを毎日登るのだ、基礎体力などは遥かに他校の生徒を凌駕するとのデータもあるので一概に無意味とは言えないが。
――事実、学園都市で開催される武術系の大会ではウチが総ナメである。ただし……強さとは努力により得るものであり、あくまでも『能力はオマケ』な一芸特化型の学園なので、『大覇星祭』みたいな総合的競技になる
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