第一部 学園都市篇
序章 シャングリ・ラの少年
七月十六日:『青天の霹靂』
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分《・》の一の確率の不幸』に改めて姿勢を正して、説教に甘んじる。それが終わった頃には、ラーメンは完全に伸びた後だった。
………………
…………
……
五時が近付き、自室を後にする。勿論、戸締まりは念入りに。鍵を閉めた後、ノブを回して確認。
因みに、ガスは最近、元栓自体を余り開いていない。本気で契約を切ろうかと思案中だったりするのは内緒だ。
鍵をキーケースに仕舞い、胸元に母から貰った幸運のお守り……肉球部分に蒼い石の付いたアンティークの、本物を用いた『兎の足』を下げたカッターシャツ姿の嚆矢は――――自室に置いていた学生鞄とハーフタイプのヘルメット、傘と学ランを入れた学校指定のバッグを手に革靴を鳴らしながら、アパートの階段を降りる。
――――青く、朝の空が霞んでいく。夜の闇を塗り潰すように、果てしない群青色が。
歩みを止めて、つい魅入ったその光景。何の事はない、いつも通りの朝の風景だ。
人口230万人を抱える、この大都市の朝の空隙。無人の道路よりビル群の隙間から覗く、群青の空を見上げて――――
「っと……いけねェ、配達が遅れたらドヤされちまう」
強いビル風を浴びて正体を取り戻した嚆矢は、気を取り直したように階段を駆け降りた。
大型の荷台付きスクーターの後席に荷物を置き、キーケースから別の鍵――――超格安の事故物件、中古スクーターのエンジンに火を入れる。
――まぁ、俺の『能力』なら問題ない。余程、性質の悪い霊に呪われてでもいなければ、だけどな。
因みに、借りた部屋も『出る』という噂の格安物件。3LDKで敷金礼金無しの三万円とか良い買い物だった、百分の九十九の確率の幸運だな。勿論、幽霊とか魔法は信じてないけど浪漫は捨てないようにしてる。在ったら良いよな、死後の世界。
ヘルメットを被り、スクーターに跨がる。これより向かうは、バイト先の新聞配達――――電子版が普及する学園都市ではこんな時間からで間に合う、配達先の少ない仕事先である。
駐輪場から出れば、すぐ脇に自販機。丁度良いと、財布機能付きの携帯を翳す。押した釦は百円の缶珈琲、軽快な取り出し口に落ちる缶の音とスロットの電子音。
早速珈琲を啜りながら、嚆矢は目もくれずに同じ釦の前に指を構えた。
「はい、百分の九十九っと」
そして――――押すと同時に、音が長い音が響く。当たったのだ。
再び響いた取り出し口の缶の音。その珈琲を取り出して、鞄に仕舞う。
「今朝も相変わらず絶好調ね、嚆矢くんの超能力は」
「
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