第一部 学園都市篇
序章 シャングリ・ラの少年
七月十六日:『青天の霹靂』
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『いくぞ――――歯ァ、喰い縛れ』
――――覚えているのはその声と、顎から頭の天辺に向かって突き抜けた衝撃だけ。
『――――――!?!』
潰れた喉から、無音の悲鳴が迸った。セピア色の景色が、信じられない速度で下方に流れる。否、自分の身体が上方に浮いたのだ。
一回転し、俯せにコンクリートの路面に叩き付けられる。その路面に蜘蛛の巣状のひび割れは、『奴』の脚が踏み抜いた痕だ。
『……お仲間は、お前を見棄てていったぞ。まぁ、力で押さえ付けてただけなら仕方ないよな、お山の大将?』
『――――…………』
完全に震盪を起こした頭蓋では声を認識できても意味が判らない。しかし、これで終わりなのだと言うことだけは理解できた。
――クソ……クソッ! 巫山戯やがって…………! 何で、何でこんな奴が……。
弱い己に、存在意義など無い。そんな事は――――誰よりも、自分が解っていた。
『だが、最後のパンチは良かったぞ。このオレにまともなダメージを与えるとは――――』
だから、せめてもの抵抗に睨み付ける。自身を撃ち破ったその男を、目蓋に焼き付ける。
『中々、根性あるじゃねえか。再挑戦なら、いつでも来い。待ってるぜ――――』
黒い、針金のような短髪。巻かれた鉢巻き。白い学ランを肩に羽織った、旭日旗のTシャツを。
――何でこんなに、■■■■■■だよ……
振り返りながらニカッと笑い掛けたその少年の姿を最後に、意識は消え去る。
夢が、覚める――――――
………………
…………
……
「あー……百分の一」
開かれた、濃厚な蜂蜜色の瞳の少年の寝起きの第一声は、正に苦虫を噛み潰した音。寝汗に張り付く亜麻色の前髪を掻き上げながら、彼は薄いブランケットを跳ね退けて起き上がった。
エアコンで適温に設定してあるとはいえ、寝室に忍び込んでくる初夏の熱気は四時半の段階でそれなりにキツい。
「時間は……全然余裕だな」
欠伸混じりに呟き、キッチンの冷蔵庫で冷やしているペットボトルのコーヒーを手早くコップに移し替えて啜りながら、頭の芯に残る眠気を払う。
今日は朝食を摂る時間がありそうだ、と。『とある筋』から入手した煙草に火を点し、紫煙を燻らせた。
「っと……母さんか。もしもし?」
と、そこで携帯が鳴る。初期設定のままのアラーム音、画面には『マ〜マ(ハート)』と、無理矢理登録させられた表示。
灰皿の縁に煙草を預け、テーブルの上のポットからカップ麺に湯を注ぐ。近くのスーパーでまとめ買いした、百円しない安いラーメン。朝なのであっさりめの醤油味だ。
ダイニングまで移動すると、そ
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