第二部 文化祭
第50話 謎の少女
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文化祭開始まで、残り24時間を切った。
落ち着かない雰囲気の中、教室の端に座り込み、ゲームをしている男子が数名。これを絶対に放っておけない真面目な女子2人が、その男子らの前に仁王立ちになって言った。
「こらこら、そこ!」
「ちょっと、あんたたち!」
2人が声を放ったのはほぼ同時だった。
「は、はいっ!?」
驚いた男子らが、慌ててゲームウィンドウを閉じる。
「あのねえ。ゲームなんてしてる暇があったら、ちょっとは手伝いなさいよ! こっちは忙しくて仕方がないってのに」
「わ、悪かったよ篠崎さん……!」
「ふふん。わかればいいのよ、わかれば」
2人の女子のうちの1人は里香だった。里香は意外と真面目なのだ。
「ちょっとリズ、いくらなんでも言いすぎだよー?」
もう片方の女子・結城明日奈はほわんほわんと言い、里香の肩に軽く手を置いた。
そして男子らと同じ目線までちょこんとしゃがみ、優しく微笑んだ。
「もう少しだから、あとちょっとだけがんばろ。わたしも精一杯がんばるから……ね?」
にこっと笑い、少し首を傾げて言う生徒会美人副会長に、男子は心を動かされたらしく──。
「そ、そうですよね! これからは、俺たちちゃんと頑張りますよ、結城さん!!」
「うんうん、えらいえらい!」
「あ、あの、何すればいいですか? で、できれば、結城さんと同じことがやりたいなあ、なんて」
「背景やってくれると嬉しいな。わたしはこのあと、キリト君たちとちょっと練習があるから……わたしの代わりに、お願いします」
その微笑みは、まさに天使の如く━━
「はい! 死ぬ気で頑張ります、結城さんの代わりに!!」
「あ、ありがとう。でも、無理はしないでね?」
横にいた里香は、こう思わざるを得なかった。
━━アスナさんマジ天使、と。
*
「━━ふう」
アルヴヘイム内で?怪しい店?と評判の喫茶━━アスナだったら絶対に寄りつかない━━で一息ついた俺は、ユイの待つ森へと急いだ。何の用事かは知らないが、突然ユイに呼び出されたのだ。
当の愛娘は、森の入り口付近にある切り株にちょこんと座っていた。こちらの気配に気づくと、むぅっと可愛く睨んできた。
「遅いです、パパ!! いったい何してたんですか!」
「す、すまんすまん……ちょっと喫茶店に寄っててさ」
「ふーん、です。パパは、わたしとの待ち合わせよりも喫茶店の方が大切なんですね」
「そ、そんなことは言ってないだろ……ユイのことは、ママと同じくらい大切に想ってるよ」
俺が言うと、ユイの表情が向日葵のようにぱぁっと綻んだ。
「ふふ、ありがとうございます。パパ大好きです!」
あまりにも無垢なその笑顔は、
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