番外8話『気づけば』
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ても……あぁ、医者がいるなら睡眠不足とただの疲労って判断もらって終わりか……大して心配することもないよな、そりゃ。
にしてもそんなすぐにどっかに行かなくたって……とか女々しいことを思うのがよくないんだろうなぁ。
「……ま、とりあえず甲板に行ってみるか」
……どんな医者だろうか。
ナミに惚れてるとかじゃなきゃなんでもいい。
そう思って倉庫から出ようとして、新たな人物が入ってきた。
もちろんナミじゃなくて、かといって新しく入ったという医者でもなくて、それは――
「……」
――サンジだ。
煙草をくゆらせて、なんだか俺を睨み付けているようにすら見える。
「……なんだよ。怖い顔して」
「もう体はいいのか」
「ん、ああ、おかげさまで」
「……そうか」
そういえばナミを無事に医者に見せてくれたようで、そのことに関してお礼を言おうかと一瞬思ったけどどうせまた『ナミさんのためだ、てめぇに礼を言われる筋合いはねぇんだよ』と怒られそうだからここは我慢しておく。
「俺に用でも……っていうか用がなきゃわざわざ二人になろうとしないか。なんだ? 全然思い当ることがないんだけど」
「てめぇにちょっと聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
なんだろうか。
「……雪山で雪崩を消した時のことだが」
「ん、ああ」
あれがどうかしたのだろうか。
逃げなかったことで怒られるとか?
いや、でもあの場合逃げても絶対無駄だった気がするんだけど――
「――言ったよな、魚人空手って」
「……」
なるほど。
察した。
サンジの考えていることを。
いくら頭の悪い俺でも、普段のサンジの思考回路を考えれば、わかる。
「答えろ」
「ああ……言ったよ」
「てめぇがどういう経緯でそうなったかはしらねぇし興味もねぇが、技の名前からして魚人がかかわってきたんだろ」
「……あぁ」
「それ……ナミさんは知ってんだろうな」
やっぱり。
サンジらしい。
本当に。
ずっとナミが魚人に虐げられてきて、でも俺は魚人の師匠にずっと良くしてもらってきて、そしてその技をひっさげて今の俺がここにいる。他の誰でもないナミにとって家族の俺が、ナミを虐げてきた魚人としての戦闘術をもっている。
その事実がナミをひどく傷つけるのではないかという心配を、サンジはしている。
人によっては余計なお世話だって言って喧嘩になってしまうかもしれないけど、これは余計なお世話なんかじゃない。サンジの顔を見れば、なんとなくだけどわかる。
サンジはただナミが傷つかないかという心配をしてくれている。
それは下心でとか、男としてとか、そういうものではなくて、サンジという一人の人間として
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