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覇王と修羅王
自称王と他称王
七話
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り込まれ、致命傷成らず。その証拠にアレクは打ち飛ばされた先で器用に着地した。
 手が痺れるが、まだ拳が潰れた訳じゃない。まだ打てる。だが確実に打ち込むには、放ってもらわなければならない。クラウスを沈めた朧撃拳を。

「……もう後の事は後でいい。今はお前をブッ潰す!!」

 身を屈め全身に覇気を纏うアレクに、アインハルトは咄嗟に身を固めた。
 来る、クラウスを沈めた拳が来る。そう感じ取ったその直後、轟風が迫った。
 だが、ガードの上からも通る衝撃をなんとか耐え、すぐさま振り向く。少しでも遅れれば迫る裏拳の餌食に成る。

 機神朧撃拳!

 直打ち、両掌打と続く剛打。そして打ち上げる拳に纏わせ、吹き荒れる覇気。
 意識が飛ばされそうになるが、耐える。噛み締め、身を固め、飛ばされぬように足をバインドで拘束し、耐えきる。
 此処が、この後の蹴りが勝負所。此処が、クラウスの記憶から何度も構想し、何度も練磨し作り上げた拳の打ち所。
 バインドを解き僅かに歩を進めながら足先から力を練りだし、身体の回転を加え、そのまま力を前へ押し出す。渾身の蹴りの勢いに合わせ、アレクの胸を穿つ!

 覇王 剛通拳!

 廃工の壁を破り消えるアレクに、アインハルトは確かな手応えを感じた。
 破った。クラウスを下した拳を、自分は今、確かに破ったのだ。

「やった……?」

 勝利、それもクラウスの無念を一つ晴らした勝利だ。とても喜ばしいが、成し得た事が未だ信じられない。
 所々に痛む身体に精神疲労も加わり、アインハルトは息を粗くして膝を着く。
 そして、決着までを見ていた面々の中、スバルとノーヴェも信じられないような顔をしていた。

「ノーヴェ、アインハルトが最後にやった事って……」
「あ、ああ……。違う部分もあるけど、たぶんそうだ……」

 静止状態から全身を使った加速で威力を炸裂させる拳は、二人の母が得意としたものでアインハルトは知らない筈だ。だが、部分部分違う所もあるが似通っている。
 どうやって知ったのか気になるが、先ずやることがある。打ち飛ばされたアレクの容態を確認しなければならない。
 ノーヴェは急ぎアレクの消えた穴に向かおうとして……歩を止めた。壁の穴を大きく壊し、激流が現れた。触れれば人体に害を成すような、灰の河だ。
 流れる先は、まだ膝を着くアインハルト。飛び退こうとする姿も見えるが、腑抜けた身体の動きは鈍く、至極アッサリ呑まれ壁の向こうへと消えた。
 代わりに大きく開いた壁の中から、拳を突き出したまま荒い息を吐くアレクの姿が見えた。突き出した拳に着けられた手甲が腕に沿い二つに開けていたが、役目を終えたように閉じた。

「ハァッ、ハァッ……」

 業の名は覇皇終極波動覇。打ち出す覇気に幾多の魔導術式を
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