自称王と他称王
七話
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衝動に駆られる。こんな事は、唯一全てをぶつけられるフェルヴィス相手でも感じたことは無い。
だが、この感覚を知ってるような気がする。体感してきたような気がする。この衝動を制し、時には解放し、戦ってきた気がするような……。
そして、戦う事を何と言い表していたか。確か――
……もう少し、もう少しで甦る。アインハルトはそう感じ取り、思い出した。
渇いて行く喉、震えてくる手足。今の自分は、彼と対峙した時と同じ感覚だ。
この男に勝てるのなら、手に入れられる。守れるべきものを守れる強さが、掴み取れる。あの時と同じく思えてくる。
だがあの時、彼は何と言っていた? 戦う前に何と言っていた? 確か――
「――争覇」
そう、争覇だ。争い、覇を成すことをそう呼んだ。
アレクの呟きに、アインハルトは頷いた。
「思い出しましたのなら、この時に何と問うたか、言ってくれませんか?」
「……この争覇の先に何を見る、とか?」
「はい。一句一字、違いません。アレディ・ナアシュ」
「俺はアレクだ。……で、お前は何と答える? ただのアインハルト?」
「私、ハイディ・E・S・イングヴァルトも同じ――――守り通せる強さを求めます!!」
先制を入れるべくアインハルトは颯爽と懐に飛び込もうとするが、目の前を拳が覆う。片腕、左だけの筈なのに幾つにも増え続ける。
だが射程は人のそれ、範囲も肩から扇状に広がるだけ。アインハルトは覇王流の歩法を細かく駆使し、掻い潜る。次いでアインハルトは右拳打を放つ……が、アレクのアッパー気味の右に腕を攫われ、跳ね上げられた。
次打は体勢が崩れていないアレクの方が格段速い。左掌が脇腹を狙うが、アインハルトもただでは受け入れない。
鋼体の型 牙山!
人体関節の硬い部分を尖らせ、相手が繰り出した攻撃箇所を潰し破壊する攻性防御。
普段は肘で行うが、今は体を捩じる必要があり間に合わない。因って使う所は膝。届く前になんとか滑り込ませた。ただ、アレクは掌底であり破壊には程遠く、アインハルトはほぼ浮いた状態だった為、後退を余儀無くされる。
その隙をアレクは見逃さない。右を振りかざしアインハルトへ迫る――
「なっ……」
――フェイント。
アレクは正拳から裏拳へ変え四連撃、防御したアインハルトの腕に打ち込み、続いて左右のアッパーで両腕を跳ね上げる。
そして、がら空きに成った胴へ無数の蹴りを撃ち込み、覇気を纏った渾身の右拳を叩き込む。
機神連拳!
アインハルトは胴を貫かれたような錯覚を受けながら後方へ飛ばされ、仰向けに倒れてしまう。
其処へアレクは飛来し、アインハルトへ襲い掛かる。何時かのスパーとは逆の構図のよう。
ならばこのまま撃たせはしないとアインハルト
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