暁 〜小説投稿サイト〜
覇王と修羅王
自称王と他称王
七話
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 一つ一つ武具を身に着けていくアレクを、アインハルトは片時も視界から外さない。武具を身に着けた終わったら、恐らく開戦するのだろう。
 だが、アレクを監視するティアナの存在で緊張が締まりきらない。

 なんだかなぁ。ヴィヴィオはなんとも言えない気持ちでいた。もう少し、締まってほしい気もする。若し自分が前に立っていたら、全力で応えるだろう。
 こんな事を思うのはまだアインハルトと再戦する約束が出来ていないからか。それとも、アインハルトに求められるアレクが羨ましいからか。だが、アレクとアインハルトが逆だったとしても、同じことを思うだろう。
 アインハルトが持つ赤い布を解く。中からはアレクが身に着ける武具と同じ色の手甲があった。
 手甲を受け取ったアレクはこれで最後と身に着けていく。その最中、アインハルトの身体が大きく成長する。
 もうすぐ始まる。そう思うと胸がもやもやする。凄く、もどかしい。
 ティアナも離れ、入れ替わる形でノーヴェが近づいて行った。この後、ノーヴェが合図を下し、始まる、そう思っていた。一際大きい音が響くまでは。

「……やはり、弾きますか」
「判りやす過ぎだっつーの」

 拳打を弾く音。
 アレクはアインハルトの拳を弾くと、大きく間合いを取り、近寄ろうとしていたノーヴェを手で制す。

「お前等、まだ――」
「悪いけどこの勝負、勝手にやらしてもらいますわ。もう手ぇ出しちまいやたし、コイツも治まり効かないでしょうから。あ、あと結界とか張れるんだったらそっちの方もお願いしやす。けっこう派手になるかもしれませんので、端の方に居ること推奨です」
「……お前、実は熱くなりやすいのか?」
「いやいや、あいつ次第でしたよ。でも俺、売られた喧嘩はけっこう買う主義で……それに言いませんでした? 俺、見られてると、どうにか成っちゃいそうって。一応ケリつける積もりなんで、見逃してくれません?」

 アレクの声色は何時もと同じだが、何時もより滑舌気味で、視線はアインハルトを捉えて離さない。
 高揚しているのだろうか。この場で冗談は言わないだろうし、もう止めても止まらなそうな気配がする。アインハルトは勿論、アレクでさえも。
 ノーヴェは渋々とだがギャラリーの所まで下がった。危険と判断したらブッ飛ばしてでも止める、と言い残して。

「さて、と。待たせたな」
「はい。本当に……本当に待たされました」
「こういう時は、嘘でも待ってないって言うらしいぞ?」
「――六百年、待ちましたから……」

 お前、十二歳だろ、とアレクは口内で愚痴るが実のところ嫌な気はしていない。自分の身に起こる事の方が気になる。
 この武具、羅刹甲を身に着け始めた時から、身体の中で騒ぐものがある。
 そして、身体が熱い。血が滾っている。叫びだして
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