Rootsmemory of Elementerers編
Prelude of Trinity
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「・・・」
彼女はボーっとしていた。
ティーカップは空、本は開かず、ただボーっとしている。
「オイ、ティアの様子、また変じゃねーか?」
「ああ・・・ずっとあの調子だ。家に帰っても、な」
エルフマンの言葉にヴィーテルシアが答える。
その声は、気のせいか落ち込んでいるように聞こえた。
「姉さん・・・何かあったのか?」
「・・・別に」
「そうか・・・それなら、いいんだ」
口ではそう言いながら、クロスはいいだなんて思っていなかった。
双子の勘が働く。
姉に何かがあったのは考えなくても解る。
そして・・・何があっても、決して誰にも打ち明けないのが自分の双子の姉である事も、解っている。
だけど、それでも。
(少しは姉さんの力になりたい・・・)
それをティアに言えば「ただ考え事してただけよ」とはぐらかされるのは目に見えている。
だから敢えて何も聞かず、何も出来ない自分が悔しくて仕方ない。
ぎゅっと拳を握りしめ、唇を噛みしめる。
(だけど、俺では力になれない・・・姉さんを不幸にしてるのは、紛れもなく俺なのだから・・・)
「・・・ミラ、紅茶ありがと」
「うん。今日はもう帰るの?」
「ええ、仕事をする気にもなれないしね」
「そう・・・あ、そうだ」
ティーカップをミラに手渡したティアはショルダーバックを肩から掛ける。
これからアルカとデートなのだろう。ミラも帰る準備をしていた。
すると、ミラが何かを思い出したように背を向ける。
「はい」
「?」
差し出された手には、封筒。
美しい模様の描かれた封筒には「ティア=T=カトレーン様」の文字。
住所は書かれておらず、不思議に思いながらもティアはそれを受け取る。
「今日ティアが来る前に、スーツを着た男の人が持ってきたの」
「ふーん・・・」
「ん?手紙か?」
「ナツ」
封筒を見つめていたティアの背後からナツがひょいっと覗き込む。
「・・・てか、離れてくれる?」
「は?・・・うおっ!」
そして知らずのうちに、ナツはティアに抱き着いていた。
とある事件が解決した時からナツに染み付いてしまった癖である(『チェンジリング』参照)。
「えーっと・・・」
誰から来たものかを見ようと、封筒を裏っ返す。
そこに綺麗な字で書かれている名前を、ナツは首を傾げながら読んだ。
「シャロン・・・?」
誰だ?
ナツはティアにそう訊ねようとして――――目を見開いた。
「・・・」
ティアは無言だった。
それはいつもと変わらない。
―――――――だが。
その青い目は見開かれ。
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